無関心が一番怖い? アウシュビッツの隣に住む一家を描いた『関心領域』
映画・音楽・舞台など各ジャンルのエンタメ通=水先案内人が、いまみるべき公演を紹介します。 【水先案内人 高松啓二のおススメ】 聞き慣れないタイトルだなと思ったら第二次大戦中にナチス親衛隊が、使っていたアウシュビッツ強制収容所の周辺40平方キロメートルの地域をさす。 青空と広大な敷地に建つ邸。そして美しい庭と幸せそうな家族、高い壁の向こう側には監視所と不気味な建物。煙突からは黒い煙があがっている。かすかに聞こえる銃声と怒号、叫び声。この邸の主はルドルフ・ヘス、アウシュビッツ強制収容所の所長である。妻のヘートヴィヒは庭を何よりも大切にしている。子供も可愛く幸せな一家。それでも何気ない会話の内容や川遊び中に流れてくる大量の灰、子供のコレクション、毛皮のコートなど壁の向こう側で起こっている事を伺わせる。 少しでもアウシュビッツの知識があればとてつもない恐怖を感じるが、知らないとナチスのホームドラマにしかみえないだろう。こういう事に無関心な方がもっと怖いかも? ちなみにヘスは『シンドラーのリスト』のアーモン・ゲートと一緒に護送され、アウシュビッツで絞首刑に処せられた。 <作品情報> 『関心領域』 5月24日(金) 公開 監督・脚本:ジョナサン・グレイザー 原作:マーティン・エイミス『関心領域』(早川書房刊) 出演:クリスティアン・フリーデル、ザンドラ・ヒュラー