やはり豊田章男会長の「3割」予測が正しかった…トランプ新大統領の「地獄の規制策」でEV企業が阿鼻叫喚のワケ
ドナルド・トランプ氏が20日、アメリカ大統領に就任する。日本経済にはどのような影響があるのか。ジャーナリストの岩田太郎さんは「現政権で進められてきたEV関連の補助金制度が廃止される可能性が高まっている。日本企業含め、撤退や縮小を余儀なくされる自動車メーカーが出てくることは避けられない」という――。 【写真】トヨタ自動車の豊田社長(当時) 変革決意示す場に ■EV補助金「1台につき118万円」のゆくえ 米大統領選挙で圧勝したトランプ次期大統領が率いる共和党が上下両院も制し、1月20日の大統領就任で、本格的な「トランプ2.0」が始動する。このことで、民主党バイデン政権の「2030年までに新車販売の50%を電気自動車(EV)にする」目標と、連邦政府のEV購入補助金制度が廃止される可能性がかつてないほどに高まっている。 1台のEVにつき最大で7500ドル(約118万円)の補助金が受けられる現行制度の下でさえ、米EV需要は前月割れ、あるいは横ばいの月が続いていた。直近(10月~12月)は制度廃止を見越した駆け込み需要の影響もあり、2024年は前年の108万台を上回り130万台と過去最高を記録した。それでもシェアは8%と目標値には遠くおよばない。補助金が止まれば売上はさらに先細ることが予想される。 その一方で、トランプ次期大統領はゴリゴリの反EV主義者ではない。むしろ、競争力のある国内外EVメーカーの間で米国内の開発・生産を競わせ、製造業の雇用を増やすことで、選挙戦の公約であった米国第一主義を実現させたい意向だ。 トランプ返り咲きで予想されるガソリン車の「復活」とEVメーカーの淘汰、そして輸入車への関税引き上げは、世界のEVシフトの流れや自動車産業全体にどのような影響を与えるのだろうか。日本の自動車企業はどう対処するのか。予測を試みる。 ■58兆円をつぎこんだ「EVシフト」はどうなるのか バイデン政権が2022年8月に米議会で成立させた「インフレ抑制法(歳出・歳入法)」は過去最大規模の気候変動対策だ。EV購入補助金(税額控除)やEVおよびバッテリー開発および生産、充電スタンド整備に総額3690億ドル(約58兆円)の予算をつけている。 スタンフォード大学のハント・アルコット教授やシカゴ大学のレイナー・ケイン教授などが10月に発表した論文によれば、購入補助金やメーカー支援も含めて1台のEVにつき最大で3万2000ドル(約504万円)が連邦政府から支出されている。 一方、2024年1~6月の上半期に米国内で販売されたEVの総数はおよそ60万台で、前年同期比7.3%増であったと、米自動車販売調査企業のコックス・オートモーティブが発表している。また、米財務省によれば、この期間にEV購入者が受け取った補助金の総額は10億ドル(約1580億円)以上に達した。