「T―1グランプリ」に「大好き条例」 狭山茶の最大産地・入間、官民で“とどめ” 濃厚なうまみや甘み特徴
5月2日。中島の姿は市の農業研修施設にあった。品評会に出品する狭山茶の製造のためだ。全国の品評会で最優秀賞を受賞した経験もある中島は、生産技術の追究に余念がない。 入間市は2022年10月に「おいしい狭山茶大好き条例」を制定し、狭山茶の振興に力を入れる。「まちも応援してくれている。良いものを作っていきたい」。金子台の茶畑はまばゆいほどの緑を放っていた。(敬称略) ■中世には「河越」産も 狭山茶は埼玉や東京の一部で生産される。県内では最大の産地・入間市をはじめ所沢市、狭山市などの県西部を主な産地とする。農水省の統計によると、埼玉の2023年度のお茶の栽培面積は726ヘクタール、荒茶生産量は793トン。生産の主体は煎茶だ。 入間市博物館などによると、狭山地域のお茶の歴史は中世にさかのぼる。14世紀ごろの文献には「武蔵河越」(現・川越市)が産地として登場。室町時代の文献には、現在のときがわ町で製造された「慈光茶」が出てくるが、この二つのお茶は後に衰退していく。
狭山地域のお茶が再び名をはせるのは、江戸時代のことだ。剣士で俳人の村野盛政と宮大工の吉川温恭が「蒸し製煎茶」の製造を開始。1819(文政2)年に初めて取引が行われた。1875(明治8)年には黒須村(現・入間市)に「狭山製茶会社」が設立。「狭山茶」のブランドで米国などに輸出を行った。 現代の狭山茶はさまざまな製品に姿を変える。アイスクリームやチョコレートなどに取り入れられ、「和」の味覚として定着。入浴剤や消臭剤への活用もみられる。また、入間市は窓口で婚姻届を出した人に、急須と狭山茶をプレゼント。県茶業研究所も入間市に所在している。