スマホ向け「ドラクエ」がプチ炎上 ―― スマデバに求められるゲームのUIとは?
ハードウェアキーとタッチ操作のメリット・デメリット
そもそも、十字キー自体が非常に優れた操作性を持っているのは皆さんご存じの通りです。任天堂が1982年に発売したゲーム&ウオッチ『ドンキーコング』で初めて採用され、ゲームブームの火付け役となったファミリーコンピュータへと継承。そして最新の次世代機まで、廃れることなく受け継がれています。 しかし、このUIをそのまま仮想化してタッチデバイスへ流用した場合、少々無理が出てきます。前述した“凹凸がないため押し損ねやすい”だけでなく、アクションやシューティングなどのジャンルでは“連打が難しい”のもボトルネックになります。 これとは逆に、タッチデバイスの方が優位性を発揮する操作もあります。たとえばフリックやスワイプ、ピンチイン/アウトなどおなじみの基本操作は、十字キーで再現するのが困難です。また、画面上のラインをトレースするような操作も、タッチの方が圧倒的に簡単でしょう。
名作も快適に操作できるUIがあってこそ
このようにタッチデバイスには、従来のハードウェアキーでは難しかった直感的かつ柔軟なUIを使える、ある意味でコントローラーに制限されていたUIを自由な発想で創り出せる、というメリットがあります。タッチデバイス向けのゲームタイトルを制作する場合、このUIを含めた全体のバランスが重要な鍵を握るといえます。 もちろん、過去にヒットしたタイトルをタッチデバイス向けとしてリリースしてくれるのも、ゲーム好きには大変嬉しいことです。「昔はかなりやりこんだ」もしくは「有名だけど未プレイだった」など、名作はさまざまな喜びを与えてくれます。しかし、UIがタッチデバイスに最適化されていない状態でリリースした場合、今回のドラクエのように批判が出る原因となるわけです。どんな名作であっても、UIしだいでプレイヤーが減ってしまうという典型例といえるでしょう。
ゲームの内容やバランスにベストマッチするUIを
そうした中、スクウェア・エニックスは12月12日にiOS/Android向けアプリ「ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君」(2800円)を配信開始しました。これは2004年にプレイステーション2用として発売されたシリーズ8作目のタイトルで、今回が初のリメイクとなります。 リメイク版では、縦長の画面サイズに合わせたレイアウトに加え、人や物に表示されている「フキダシ」をタップすることで会話/各種動作ができ、進行方向に自動で移動する「AUTO」ボタンを備えるなど、第1作目と比べてさらなるスマートデバイスへの最適化が図られています。インターネット上の反響を見ると、今のところ好調な滑り出しといえるでしょう。 スクウェア・エニックスでは今回登場した2作品だけでなく、スマートデバイス向けにドラクエシリーズをIからVIIIまでリメイクするというプロジェクトが進行中です。また、ドラクエに限らず今後は各社からさまざまなゲームタイトルがリリースされると思いますが、いずれもスマートデバイスの直感的かつ柔軟なUIをゲームの内容とからめ、いかに使いこなせるかが勝負になりそうです。 (執筆・荒木孝一 / エースラッシュ)