サム・アルトマン氏:サムが生み出した世界【最も影響力のある人物 2023】
暗号資産との融合
最近の暗号資産カンファレンスで、私はハッカソンの審査員を務めたが、参加プロジェクトのほぼすべてに、何らかの形でAIが関わっていた。これはプロジェクトが「AIプロジェクト」だったという意味ではない。さまざまな分野やユースケースにまたがる、分散化のビジョンを持つ「Web3プロジェクト」だったが、そのほとんどがAIを活用することで、より速く、より効率的に、より簡単にスケールするようになっていた。これは暗号資産の根本的な目標の1つではないだろうか? Web3起業家の多くの仕事を思い浮かべてほしい。スマートコントラクトのコーディング、ビジネスプランの作成、ウェブサイトの立ち上げ、ロゴの作成、市場調査、競合調査、マーケティングキャンペーンの立案、トークノミクスの開発、ブログ記事の執筆、エラーチェック、ネットワーキングなどなど、AIはこれらすべてをサポートできる。 ドラゴンフライ(Dragonfly)のマネージング・パートナーであるハシーブ・クレシ(Haseeb Qureshi)氏が語ったように、AIのおかげで「生産性は劇的に向上する。小規模なスタートアップは、より多くのことができるようになる」だろう。そして、AIの影響についてアルトマンにすべての功績(あるいは責任)を与えるのはフェアではないが、ChatGPTによって彼は明らかに先頭に立っている。 AIは株式市場に生命を吹き込んだことと同時に「AIとブロックチェーンの融合」という新しいカテゴリーのプロジェクトにも拍車をかけた。 確かに、SingularityNETからFetch.AIに至るまで、これらの多くは2023年以前に発足していたが、生成型AIの台頭により、新たなソリューションが急務となった。分散型AIは、いいとこ取りを可能にしてくれるだろうか?
ワールドコイン
皮肉なことに、おそらく最も著名なAIと暗号資産の融合プロジェクトは、他でもないサム・アルトマン氏自身によるものだ。ワールドコイン(Worldcoin)だ。 「できるだけ多くの人々に公平に配布される新しい暗号資産、ワールドコインを紹介しよう」とアルトマン氏は2021年10月にツイートし、眼球をスキャンする輝くクロームの球体「The Orb(オーブ)」を公開した。 (AIボットではなく)人間であることを証明すれば、ユニバーサル・ベーシック・インカムの一種として暗号資産を手にすることができる。 その究極のビジョンは、超高度AIが人間に代わって働いて富を生み出し、その富はすでに裕福なテックエリートだけでなく、すべての人に分配されるべきというものだ。 眼球スキャンについては、アルトマン氏とワールドコインの親会社であるTools for Humanityは、必要悪とみなしている。AIの性能がますます向上するにつれて、人間であることを証明する唯一の方法は生体認証データになるだろうと彼らは考えている。 今年7月にワールドコインが正式にローンチされる直前、私はベルリンに行き、The Orbを使って眼球をスキャンした。Tools for HumanityのCEOであるアレックス・ブラニア(Alex Blania)氏に会い、The Orbの仕組みを学び、サム・アルトマン氏ともオンライで話をした。 参考記事:ワールドコイン設立秘話:Orbの内幕【前編】──「痛みを伴うことはわかっている。お金もかかる。人々は変だと思うだろう」ブラニアCEO アルトマン氏は、AIが主流になった後の世界でも仕事はある、しかもおそらく今よりも良い仕事があるだろうが、「移行期にはある種のクッションが必要になるだろう」と語った。 アルトマン氏は、ワールドコインをそのクッションと見なしている。2019年、それは単なるアイデアだった。ブラニア氏がベルリンで私に語ったように、当初は「ビットコイン・プロジェクト」として構想され、地球上のすべての人に無料でビットコインを提供することを目標としていた。