「グローバルノースの大量消費を解決するためにいるのではない」 古着の最終地点ケニアのデザイナーと現状を議論
WWD:彼女のように地元の特徴に焦点を当てて、そこからしか生まれないクリエイションを生み出すというのはすごく良いアイデアだと思います。
鎌田:そうですね。現地でデザイナーと話すと、エンドオブライフの現場にいるので生み出すことへの恐れも当然感じると。ではもう、古着だけ着てれば良いのかというと、それはあまりにも喜びがない。作るという喜びは人間にとって根源的なものだからそれを奪われたくないと強く主張していました。日本でもほとんど海外に生産が移っています。もちろん国外生産が悪いわけではないですし、大量生産がすぐに悪とはいえないかもしれないですが、それぞれの土地で育まれてきた技術が全く使われなくなってしまうのは明らかにもったいないこと。作る喜びを感じながら、それぞれの土地のユニークネスがもっと生き残っていけるような形にできないんだろうかと考えました。
WWD:そこも私たちが考えていかないといけない持続可能性の大事なポイントの一つですね。先ほどの動画にもあったエプソンも古着を使った素材を開発している。
鎌田:エプソンは紙の再生技術ドライファイバーテクノロジーを繊維製品に活用するための技術開発を行っています。今衣類のリサイクルの一つの大きな課題は、複数の繊維を分離してそれぞれ生かすことだと思いますが、混ざった状態でも再生できる選択肢を模索しているようです。
「個人が感じている違和感を業務に反映できるような制度を」
WWD:最後に鎌田さんから、日本のファッション産業に関わる人たちに伝えたいことは?
鎌田:皆さんここにいらっしゃるということは、どうにか産業を変えなくてはいけないと思われているかもしれません。ファッション産業で働く1人1人の方と話すと、繊維やファッションへの強い愛着を感じます。日々仕事をする中で企業人として売り上げを伸ばし続けなければいけないということと、明らかに環境的に無理が来ているという、どちらもが一人の人の中に共存しています。今の経済システムでは売り上げを上げながら、一気に環境負荷を低くすることが難しい。環境負荷が低い方が、価格が高いですし、生み出したものに対して責任を持たなくていい仕組みになっています。産業によっては生産量に合わせて回収して再生する責任を負う業界もありますが、そういった制度がない中で1人の努力、個社の努力で変えられることには限界があると思います。ですので、個人が感じている違和感や変えた方がいいと思っていることを業務に反映できるような制度、政策について、どこかに過度に負担がかからない形できちんと議論されていく必要が早急にあると思います。