御陣乗太鼓、白山市で打ち初め 輪島の保存会、復興誓う響き
白山比咩神社の豊年講春季大祭は3日、白山市の同神社で行われ、能登半島地震で被災した輪島市名舟地区の県無形民俗文化財「御陣乗(ごじんじょ)太鼓」の演奏が奉納された。保存会が演奏を披露するのは今年初めてで、大勢の参拝者が見守る中、メンバーは早期復興の願いを込めた迫力ある音色を響かせた。 メンバー10人が神社を訪れ、神前で加賀地方の農業関係者ら約200人を前に奉納演奏した後、拝殿前で参拝者向けに演奏を披露した。 拝殿前には「絆」や「援」と書かれた幕が飾られ、約400人の参拝者が集まった。夜叉(やしゃ)や幽霊をかたどった面を着けたメンバーは、冷たい石畳の上をはだしで動き回り、気迫のこもった声を上げながら、鬼気迫る演奏を繰り広げた。 地震で倒壊した名舟町の白山神社の修復費や能登半島地震の義援金を募る募金箱が設置された。白山市の70代女性は「力強い演奏に涙が出た。能登の伝統が未来に残っていくように応援したい」と話した。 保存会は毎年1月2日に名舟町の白山神社で打ち初め式を行うが、今年は地震で中止を余儀なくされた。地震後は白山市の浅野太鼓楽器店のスタジオを拠点にしていることから、全国の白山神社の総本宮である白山比咩神社で打ち初めを行うことにした。 保存会の槌谷(つちや)博之事務局長(57)は「約2カ月ぶりとなる公演で、うれしかった」と話し、16日に金沢駅で行われる北陸新幹線の県内全線開業記念イベントに向け「会員がなかなか集まれず厳しい状況だが、しっかり練習して恥ずかしくない演奏をしたい」と力を込めた。 ●坂本冬美さんがエール 御陣乗太鼓は、美空ひばりさんら名だたる歌手の名曲に登場することでも知られる。「能登はいらんかいね」を発表して以来、御陣乗太鼓保存会と何度も共演する歌手の坂本冬美さんは「かつてその勇壮な太鼓で敵の奇襲を撃退したのですから、どんな困難にも負けずに復興の先駆けになると信じております」とメッセージを寄せた。