武雄市図書館で是非 なぜ東京・千代田区で「民間委託」が機能したか?
佐賀県の武雄市図書館を運営するCCC(カルチュアコンビニエンスクラブ)が、図書館の蔵書を充実させるために系列の古書店から本を購入していたことに対して、批判する声があります。武雄市の例を受けて、こうした図書館運営に「指定管理者制度」はそぐわないという見方も出る一方、サービス充実につながっている自治体もあります。東京都千代田区です。それはなぜでしょうか?
埼玉のラーメン本や古い資格本
指定管理者制度とは、地方自治体の公の施設の管理運営を、民間事業者やNPO法人など幅広い団体に委託できる制度。これまで委託先は公共的な団体などに限られていました。 武雄市は2013年に市立図書館に同制度を導入して、CCCに運営を委託しました。CCCに委託した初年度、来館者は92万人に増加し、滑り出しは順調でした。ところが、ここへきて問題が表出してきています。CCCが購入したのは佐賀県や武雄市とは関係性が乏しい埼玉県のラーメン本や10年以上も前に出版された資格試験の本だったのです。稀覯本や貴重な郷土資料ならば、図書館が購入する意義はあるでしょう。しかし、図書館が新たに購入するにはふさわしくない本だったことから、図書館運営に疑問が呈されるようになったのです。 こうした問題は神奈川県海老名市でも起きています。そうしたことから、経営効率を追求する同制度は図書館に向いてないとする指摘もあります。 しかし、武雄市よりも早くから図書館に導入している自治体があります。それが東京都千代田区です。東京都千代田区は、2007年から区内に4館ある図書館の経営を民間事業者に委託しています。また、都立図書館だった日比谷図書館は2009年に千代田区に移管されましたが、2012年から民間事業者に運営を委託されています。全図書館の運営を指定管理者に任せている千代田区ですが、武雄市のような問題は発生していません。
古書店街の神保町がある土地柄
「指定管理者制度を導入するときは、貸出率や経営効率を上げようという意見も出ました。しかし、千代田区は出版社が多く立地している自治体です。そのため、編集者や作家といった人たちが図書館を頻繁に利用しています。また、日本有数の古書店街である神田神保町もあります。いわば、千代田区にとって出版は大事な産業であり文化でもあります。図書館も出版文化を担う施設ですから、経営効率を求めるものではないという考えに至りました」(千代田区文化振興課) 千代田区が図書館を重要な施設として捉えていることは予算からもうかがえます。指定管理者制度を導入する前の2006年の図書館の経費は、約2億7000万円。民間委託を開始した2007年は、3億6000万円。同制度を導入しても図書館にかかる経費は増加しているのです。 さらに、2012年には8億7600万円まで増加しています。これは、東京都から日比谷図書館が移管されるとともにリニューアルして日比谷図書文化館になったからです。日比谷図書文化館は従来の図書館機能のみならず、博物館機能や講演会などが催されるコンベンションホール機能なども併せ持っています。