齊藤工が写した松本若菜、月明かりに溶けそうな美しさ。
ハンサムウーマン、という言葉がぴったりな女性だと思う。細身で、穏やかに長身で、品よく整った顔立ち。出演する作品のなかでも、きびきび動き溌剌とした役柄が多い。 けれど、そういった表面に纏う印象の奥に、とても柔らかで温かく、儚げな優しさを秘めているのが松本若菜なのかもしれない。 齊藤工が共演作の撮影の合間に撮影したモノクロポートレートを見ていると、松本若菜の幅の広い人間力が映っているように感じた。齊藤は松本に関してこう語っている。 「太陽みたいな方。現場にいるすべての方々に、自然に純然と優しく光を当てて、気がつくと現場の士気が上がっている。 "俳優部だけ"とか、"近場だけ"とかはザラにありますが、若菜さんはもっと広くもっと深い」(齊藤) 斎藤と松本の共演作は、先日(2024年3月18日)最終回を迎えたばかりのフジテレビ月9ドラマ「君が心をくれたから」。ふたりは、"いまを生きる"若い主人公たちの未来を見守る同士のような役柄だ。生きた人間としての役割を終え、かの世界からやってきた存在として登場する斎藤と松本は、黒い衣装を纏い、主人公たちの傍らに立つ。ドラマの最初のほうでは不可思議で空恐ろしかったふたりが、血肉の通う若い主人公たちと接するうちに、この世に生きた確かな記憶を持つ、心を存分に使って自らの人生を生き抜いた人物だったことがだんだん明らかになっていく。 この過程で、他者に共感し寄り添う松本の演技こそが、この世界と彼方の世界のボーダーを淡くしてくれ、観る者に優しい気持ちを抱かせる理由だったことは明らかだ。
「作品の中では若菜さん演ずる千秋は"太陽"を産み、太陽のために魂を挺して"月明かり"に消える。まるで美しく力強い母性の象徴のような表現に、隣で鳥肌立ってました。そんな架橋の最中に時間をいただき、失礼ながら、僭越ながら切り撮らせて貰った作品です。それは事前に願望含めて漠然と想像していた"そのもの"で、テレパシーレベルで最高の瞬間を若菜さんは提供して下さいました。改めて"松本若菜の魂"に感服した瞬間でもありました」(齊藤) 優しく心がほどけていくような物語。その物語の中に在って、「月明りに溶ける」ような柔らかく優しい存在感の松本若菜に、観る人は浄化されるはずだ。