【訂正】解散したVTuberグループの“その後の物語” 再びスポットを浴びる3人に注目
VTuber~バーチャルタレントシーンを観測していると、毎日のようにさまざまな個性を持った新人タレントたちのデビューを目の当たりにする。 【動画】iTunes Storeのエレクトロニック トップソング ランキングで1位を獲得したChumuNoteの楽曲「Broken Promises (feat. Purukichi)」 グループやプロジェクト、事務所といったくくりに目線を広げてみると、にじさんじ、ホロライブ、ぶいすぽっ!、ななしいんく、Neo-Porteなど、シーンをリードする事務所やプロジェクトの活動が目立ちつつも、彼らの轍を追いかけるように新しいプロジェクトがいくつも立ち上がってきている。 そのなかにはうまく運営がつづいているものもあれば、さまざまなトラブルや問題が生じてしまい、活動休止・運営会社の廃業といった結末を迎えてしまったものもある。 運営会社が閉鎖してしまったあとに活動を続けるにしても、活動はタレント当人にすべてがかかる個人としての活動になる。うまくいくかどうかはかなり不安であろう。 そんななか、プロジェクト解散・会社倒産などの憂き目にあっても個人として活動を続け、順調に人気を集めることに成功しているタレントたちがいる。そんなタレントたちの中から今回紹介したいのがChumuNote、天鬼ぷるる、宙星ぱるの3名だ。プロジェクトが解散し、その後の行路もある程度バラバラだったなかで、それぞれの活動でスポットライトが当たりつつあるのだ。 彼女たちの旅路を振り返る前に、「ZERO Project」というプロジェクトに軽く触れよう。 同プロジェクトはVTuber特化型ニュースサイト・V-Tuber ZEROが主導するプロジェクトとして、2019年3月4日にスタートしたものだ。始動したてのころはライブ配信サービスのSHOWROOMやIRIAMでの活動を中心としており、そこから徐々に活動の幅を増やしていくことになった。 その後、メンバーを少しずつ増やしていくが、2022年11月30日をもって解散。所属していたメンバーの進路は、個人として活動を続ける者、別事務所への移籍を決めた者、そのまま活動をやめる者など様々であった。 ■名前を失うが“再”デビュー 多岐に渡る活動で注目を集めるChumuNote はじめに紹介するのは、個人VTuberとして活動するChumuNoteだ。 彼女の強みはなんといっても音楽活動。Studio Oneや専用ソフトを使ったミキシングや編集を得意としており、歌えばクールな歌声を披露、クラブイベントでのDJプレイもおこなうなど、その才覚はシーンのなかで注目されている。 そんなChumuNoteだが、彼女にはかつて事務所所属のVTuberとして活動していた時期がある。所属プロジェクトの解散が発表され、2022年10月末をもってVTuber活動を卒業、“一般女性”になることとなった。 基本的に、VTuberの運営会社がIPの権利を保持している場合、契約終了後はVTuberの名義/ビジュアルが一切使えなくなる。 場合によっては、契約終了後も所属タレントがそれまでと同じ活動をしやすいようにと、運営会社とタレント本人らが事前に交渉をしたうえでLive2Dモデルや3Dモデルをタレント本人に譲渡もしくは買い取ってもらうという事例もある。 彼女も事務所との交渉にのぞんだが、結果的に解散前の活動名やキャラクターデザインを使用することができなくなってしまった。しかし、X(旧:Twitter)のアカウントはChumuNote個人に帰属していてようで、そこからは心機一転、プロジェクト解散前から運用していたTwitterアカウントをつかい、新たに「ChumuNote」として活動をスタートしたのだ。 新しいビジュアルなぞ考えていなかった彼女は、とりあえずアイコンを白に設定して運用を開始。これがSNS上でバズったのだ。 ChumuNote本人の口から語ることができない以上、彼女が何者であったかを明言することは避けたい。が、ChumuNoteが過去の名義から引き継いで使用しているX(旧:Twitter)アカウントのIDを見れば、自ずと察することはできる。 フォローした覚えのない真っ白のアイコンのアカウントが急にタイムラインに現れたかとおもえば、「元企業VTuber、現ニート」「VTuberを卒業した一般女性」と自己紹介があり、そのIDを確認して状況を知ったファンは多かった。 その後、それに気がついたファンたちの手によって白アイコンをイジるようなファンアートが次々と生まれ、彼女をサポートする流れが生まれたのだ。 その後2022年12月に制作チーム・TRIFRONTIERの広報 兼 ミキシングエンジニアとして勤めることを報告したChumuNote。本業のミキシングエンジニアとしては所属するものの、配信者としては引き続き個人で活動を続けていくと宣言していた通り、2022年12月30日には自身のビジュアルを発表。2023年2月17日にはChumuNoteとして初配信をおこなった。 無事に“再”デビューを果たすと、過去の経験や人脈も活かして精力的に活動、さまざまな企業とのコラボレーション企画も開催されることになった。 得意とする音楽活動にも熱をあげ、3月中旬に発表した「Broken Promises (feat. Purukichi)」は彼女のボーカルとクラブサウンドが密に絡み合った1曲となり、これがスマッシュヒットを記録。iTunes Storeのエレクトロニック トップソング ランキングで1位を獲得したのだ。 また、かつてZERO projectの初期メンバー・紡音(つむぎね)れいが所属していたユニット・épeler(エプレ)に“新メンバー(大人の事情)”として加入。VTuberである柚子花とFlare Runeの3人で同ユニットは“再始動”を果たし、こちらの活動も活発化しており、活動の幅が広げている。 破竹の勢いで自身の存在を示してきたChumuNoteだが、まだ1年目を終えたばかりというのが驚くべき点であろう。2024年もこの勢いのまま、時折見せるネットフレンドリーなセンスとともに支持を集めていきそうだ。 ■年を経るごとにキレもノリも増していくハイテンションガール、天鬼ぷるる つづいて紹介するのは、ZERO Project2期生として活動していた天鬼ぷるるだ。 彼女はオーディションを通じて特別審査員賞を受賞し、デビューを果たした。 2021年2月19日に初配信を迎えた彼女だが、じつはデビュー前に作詞・作曲・編曲に歌唱まで担った楽曲「ぱいなっぷるる」をYouTubeに投稿している。 当時は『Apex Legends』などのFPSゲームをプレイしつつ、「マシュマロ(匿名メッセージサービス)」を通して送られてくるリスナーからの質問を切って切って切りまくる、そんな雑談配信もおこなっており、人気を博していた 当時の配信を見返してみると、いまとあまり変わりのない独特の口調/言葉遣いで話す彼女の姿がある。強いて違いをあげれば、今よりも声色が多少低く、よりハッキリと話していること。変わらぬ高いテンションで周囲を盛り上げてみたり、同期・先輩と同席した際に率先して場をまとめてみたりと、その存在感を光らせていた。 現在の彼女といえば、その口調だけでなく、彼女の趣味・嗜好も話題にあがりやすい。 配信途中に「換気する!」と言って席を外すことがあったり、やけにタバコの知識に詳しかったりと、「もしかして彼女はタバコを吸っているのでは?」という噂ウワサがストリーマーやリスナーの間で話題になった。それに合わせ、のちに所属することとなるeスポーツチーム・REJECTから「換気スウェット」なるオリジナルのアパレルが発売されている。 家族含めてお酒好きで、「夏になると大変。冷たい飲み物がお酒しか無いから!」「(好きなお酒は?)ストロングゼロ!ハッピーになれるからね!コスパが良いし毎日飲んでる!」と笑って話している。 普段の会話内容や口調、明るい性格もあって「おバカキャラ」のように受け取られそうになるが、ZERO Project所属時代から周囲の空気に合わせて意見をあげたり、優しい言葉をかけたりする姿がたびたび見られる。、リスナーのネガティブな言葉にも「でもそれってさ……」とアドバイスや前向きな視点を提示することもしばしば。 本人はそういった素振りをみせないようにしているが、機転の利いた言動とのギャップに“素の天鬼ぷるる”がみえてきそうだ。 それまではYouTubeを中心に活動していた彼女だが、2021年11月からはTwitchでの配信にシフトしていくようになり、Twitchでの活動があることで様々なストリーマーと繋がりを持てるようになった。 ZETA DIVISIONに所属する人気ストリーマー・k4sen、『Apex Legends』で名を馳せていたプレイヤー・Tempplexと共にZERO Projectが主催した『Apex Legends』の大会でチームを結成、大会に臨んだことはターニングポイントになるかもしれない。 初めての交流であったが、大会を通してゲームを共にプレイし、k4senに自身・同期の個性を見せた一夜となった。 ZERO Project解散後は個人VTuberとして活動することを選び、本格的にTwitchでの活動を続けていくことに。2022年後半の時期は赤見かるび、猫麦とろろ、濃いめのあかりん(現:夢野あかり)など女性のVTuberに人気が集まっており、ぷるるにも徐々に注目があつまっていくこととなる。そうしたなかで、ぷるるの濃厚かつ強烈なキャラクターに興味を持ったストリーマーらとさまざまなコラボ配信をするようになった。 そんな彼女は、2023年に入って大きな脚光を浴びるようになる。そのきっかけは、タクティカルFPSタイトルの『Project F』だ。 日頃から親交のあったストリーマー・けんきが制作したゲームということもあり、彼とその周囲のストリーマーたちが一斉にプレイしはじめ、同タイトルは一時かなり流行していた。もちろん、ぷるるも配信をともにし、さらに注目を集めるようになった。 その後、2023年8月にeスポーツチーム・Crazy Raccoonが『Crazy Raccoon Cup Project F』として大会を開催。ぷるるも出場し、k4senやボドカ、VTuberの渋谷ハル、兎咲ミミといった人気ストリーマー/VTuberたちとチームを結成。関西出身のボドカが思わず苦笑いを浮かべてしまうほどの圧倒的なハイテンションぶりでチームを盛り上げ、チームの優勝にも貢献した。 その直後にはREJECTが主催する『ストリートファイター6』の大会『REJECT FIGHT NIGHT ROUND2』にも参加、同時にeスポーツチーム・REJECTに加入したことが発表された。 同大会では格闘ゲーマー・梅原大吾を筆頭に、日頃から仲の良かったストリーマーのけんき、たいじ、VTuberの乾伸一郎らと共に出場。出場に合わせ、REJECTに所属する格闘ゲームのストリーマー・ハイタニとのコーチ企画に出演するようになると、その成長とともに彼女自身のキャラクターは格闘ゲームシーンにも広まっていくこととなった。 以前に比べるとよりムシャムシャとした発音で、よりハイテンションかつしゃべくりスタイルで配信をするようになっており、強烈な個性をもつ盛り上げ役/イジられ役な一面でストリーマーやリスナーらに受け入れられるようになっていた。その変わりようには、元同期である宙星ぱるも「そんな話し方だったっけ?」と思わず尋ねてしまうほど。 以前には関わることのなかったような面々とつながりを持てたことで陽の目を浴び、それまでとは別シーンの事務所に加入することになった天鬼ぷるる。個人VTuberとして活動をスタートして約1年での躍進は、栄転と言っても過言ではないかもしれない。 愛しのひなーのに会いたくて暴走してしまうぷるる【公式 ぷるる切り抜き VCRGTA スト鯖】 彼女は口癖のように「いやぁハッピーだねぇ!」と口にし、ネガティブな言葉が挟まってもハイトーン&陽気なムードで吹き飛ばそうとする。パっと光り輝くようなイメージがある彼女だが、今後他を圧倒するかのようなキャラクターで存在を知らしめていくはずだ。 ■愛らしさや可愛げを振りまく“ドジっ子” 、宙星ぱる そんな天鬼ぷるるとほぼ同時期にZERO projectからデビューしたのが、宙星ぱるである。 ZERO project2期生として天鬼ぷるると同期である宙星だが、彼女は2020年8月頃からREALITYを通じ個人VTuberとして活動開始、その後にZERO Projectへ参加したという流れを汲んでおり、じつはぷるるから見ると先輩である。 活動当初にはYouTubeで、2021年12月頃からTwitchで配信をスタートすると、ゲームを歌を中心にした配信をつづけ、ジワジワと人気を広めていった。 ショート~ボブ寄りの髪型に全体的にピンク寄りな色合いのビジュアルを持っていることもあり、屈託のない笑顔や笑い声で雑談したり、モタモタとした印象をあまり抱かせないキュートな女性だ。 そんな彼女だが、おっちょこちょいな一面を持っているドジっ子でもある。そのせいかゲーム中に珍プレイが飛び出すことが多く、それがリスナーを大いに笑わせてくれるのだ。当然本人も意図していないため「あぁ~! 操作間違えたぁ!」と騒ぐのは1回の配信で1度きりのことではない。 こうしたこともあり、リスナーからは明るく元気なドジっ子と見られることも多く、彼女の笑顔や笑い声にホッコリとするリスナーは多いはずだ。 先述したZERO Project在籍時にぷるるを通じてk4senと知り合っており、密かに彼女の配信をみていたk4senは彼女をこのように評していた。 「ぱっさん、なんで伸びないんだろうなぁ? あいつはマジでおもろい。普通に5000人6000人(の視聴者を集めるくらいの)面白さがある。オレいろんな配信みるけど、マジで配信の才能があると思う。でも100人も見てなくて、今日クレジットカードが止まったらしい……(笑)」 「Call of Duty」シリーズのゲーム実況者/大会解説などを務め、その後10年にわたって人気配信者として活動する彼は、ネットシーンをサバイブするなかで様々なストリーマーやVTuberを見てきた見聞はもちろん、活動初期からコミュニティ運営に力を注いできたリーダー的な資質を備えている。そんな彼が、配信のなかでこう評したのだ。 宙星に注目が集まったのは、k4senが彼女を評してから約1年後、2023年10月初めに開催された『VCR ARK2』に参加したころだ。 多くの人気配信者たちが集まる企画へ参加することができた宙星だったが、『ARK: Survival Evolved』をプレイするにはギリギリなスペックのパソコンで配信をしていたため、一昔前のゲームのようなグラフィックでプレイせざるを得なかったのだ。 あまりに衝撃的な絵面に、企画がスタートして間もなく参加している配信者同士の会話やリスナーのコメントづてで「宙星ぱるの画面がヤバいらしい」という話題が広まり、彼女の配信を一目見ようと視聴者が集まることに。同企画を運営しているVAULTROOMのオーナー・土井氏が、「PS2かとおもった」とSNSに投稿するほどだった。 「配信画面が他の人よりもおかしい」と捉えると、ネガティブな広まり方に感じるかも知れない。だが、これが大きなチャンスとなる。 配信を見ていた土井氏から「ヤバい恐竜を捕まえたらPS2を卒業させてあげる」というメッセージが届いたようで、直後から宙星は“ヤバい恐竜”を捕まえるために奔走することに。 恐竜捕獲のために奔走する彼女の事情を知り、手助けをしようとさまざまなストリーマーやVTuberらが協力することになった。『VCR ARK2』が「1つの街を作って全員が住み、襲ってくる恐竜の攻撃に耐える」という内容で、「協力」をテーマにした動きと彼女の狙いとがマッチする形になったのだ。 企画終了後、多くのストリーマーやVTuberと親睦を深めた彼女のもとには、高スペックなパソコンがちゃんと届いたようだ。何よりドラマを生み出した彼女のもとには、活動において重要な「交友関係」「パソコン」だけでなく、以前よりも多くの「視聴者たち」が自然と集まるようになった。 現在彼女は『GTA5』を使ったサーバー企画「ストグラ」に参加していることが多く、同企画の参加者やファン/リスナーからよく知られる存在となっている。2024年に入り、彼女がどのような活動を見せてくれるのかに期待したい。 ※記事初出時、本文に誤りがありました。以下訂正の上、お詫び申し上げます。(2024年1月15日10:05、リアルサウンド編集部) 誤:そんなタレントたちの中から今回紹介したいのがChumuNote、天城ぷるる、宙星ぱるの3名だ。 正:そんなタレントたちの中から今回紹介したいのがChumuNote、天鬼ぷるる、宙星ぱるの3名だ。
文=草野虹