Game*Sparkレビュー:『FINAL FANTASY VII REBIRTH』のゲーム性は、往年の原作ファンも楽しめるのか? 一変した「探索」と「バトル」で味わう新たな興奮
Game*Sparkでは、全7本の『FINAL FANTASY VII REBIRTH』レビューを掲載します。 いずれの記事もネタバレを含むため、閲覧の際には留意してください。 【画像全26枚】 それまでのドット表現から大きく転換し、3Dによる描写と演出で刺激的なプレイ体験を提供した『FINAL FANTASY VII』(以下、FF7)。この名作をベースに、3部作構成でリメイクするシリーズの2作目『FINAL FANTASY VII REBIRTH』(以下、『FF7 リバース』)が、2月29日に待望の発売日を迎えました。 初代PlayStationの人気を決定づけたとも言われる『FF7』は、名作と賞賛する声も多く、それを現在に蘇られるリメイクシリーズにも高い関心が寄せられています。しかし一方で、当時のプレイ体験とは全く違う作品になってしまうのでは、といった不安を抱く人も少なくないでしょう。 そこで本記事では、当時『FF7』を楽しみ、関連作なども遊んだファンというユーザー層に向け、『FF7 リバース』で味わえる体験や手応えなどに主眼を据えたレビューをお届けします。今回は、特に気になる「フィールド探索」と「バトル」に焦点を当ててみました。 カームを出た後の「グラスランドエリア」だけで溶けていくプレイ時間 元々1本のゲームだった内容を3部作にしている時点で、その内容や密度は大きく変化しています。ミッドガル脱出までを描いた1作目『FINAL FANTASY VII REMAKE』(以下、FF7 リメイク)の時点で、急がずにクリアを目指すと30~40時間程度はかかります。原作の『FF7』なら、終盤に入っていてもおかしくないプレイ時間です。 3部作のそれぞれを1本のゲームとして成り立たせるため、ボリュームが増えるのは自然な流れです。前作の『FF7 リメイク』では、クラウドなど主要キャラクター陣の掘り下げや、より細かい世界観の描写、原作にはなかった新要素などで、プレイボリュームを増していました。 この点について『FF7 リバース』の感触は、前作以上と断言できます。本作ではミッドガル脱出後から始まり、いよいよ本格的に広大な世界を冒険する形になりますが、まさしく「広大」という表現に偽りがありません。 例えば、『FF7』ではカームを出た後、チョコボファームなども眺めつつ、多くの人はミドガルズオルムをかわしてからミスリルマインに辿り着いたことでしょう。『FF7 リバース』でもこの流れ自体は踏襲されていますが、筆者のプレイを例とすると、カーム出発からミスリルマイン到着まで7~8時間ほどかかりました。 この7~8時間は、強敵に足止めされていたり、RPGにありがちな“お使い要素”の強いサブクエストであちこち走りまわされた、というわけではありません。各要素の詳細は省きますが、フィールドの探索やモンスター討伐、シミュレーターのバトルなどをごく自然と楽しんでいた結果、「もうこんなに時間が経ってたの!?」と自分自身に驚く結果となりました。 <cms-pagelink data-page=”2” data-class=”center”>寄り道とメインストーリーの配分に『FF7 リバース』の自由さを見る</cms-pagelink> ■オープンワールド的“ではない”、指向性のある「連動型の探索要素」 筆者自身、オープンワールド作品で探索などにハマるタイプですが、『FF7 リバース』で時間が溶けた理由は、そうした作品とは少し感触が異なります。 オープンワールド系の名作は、何かありそうな場所へ行くと実際に発見があり、“苦労に対する報酬”が頻繁に発生します。しかし『FF7 リバース』の探索は、例えば小高い崖の上へと回り込んだり、路地の行き止まりまで進んでも、空振りで終わることが少なくありません。 しかしこの話だけで「『FF7 リバース』のプレイ密度は低い」と断じるのは早計です。本作の場合、イベントなり、レアな敵との遭遇なり、アイテムの発見なり、「何かが起こる場所」への導線が非常に明確で、アテもなく探索する時間はほとんどなく、大半は「あそこに行って通信塔を起動しよう」「次はあっちで討伐かな」と、目的を持って行動することが大半です。 しかも、その時その時で目的にできる「小さな目標」が同時にいくつもあり、該当フィールドで体験できる要素が尽きるまで、どれを進行するかはプレイヤーが自由に選べます。また、ひとつの小目標を達成すると別の要素が開放されるといった、各要素の連鎖的な繋がりが「止め時を失う継続的なプレイ」に拍車をかけており、これこそがあっけなく時間が溶けたゲーム性の正体です。 『FF7 リバース』におけるゲーム進行の特徴を一言で表現するなら、「指向性の強い冒険」と言えるのかもしれません。広大なフィールドを未知のまま手探りで探索するのがオープンワールド系の醍醐味だとすれば、フィールドに点在する「何かがある場所」に向かい、そこをクリアすることで他の要素が連鎖的に作動し、小目標がさらに増えていくのが『FF7 リバース』の探索です。 この小さな達成感を積み上げていく楽しさは、やがて大きな成果へと結びつき、気が付くと最初のエリアを総クリアし、7時間が溶けていました。これが、『FF7 リバース』における探索の楽しさとその結果です。 オープンワールド系の探索や発見を楽しみたい場合、『FF7 リバース』だと少々物足りないかもしれません。しかしそれは、本作の作り込みが浅いのではなく、提供する面白さのスタイルが異なっているため。明確な目的をクリアしていくだけで、1エリアがこれだけ楽しめるのならば、密度という点でも十分以上のボリュームでしょう。 「探索要素が苦手」という人もOKな、自由度の高いゲーム進行 フィールド探索は、最初のエリアだけに限った話ではありません。ミスリルマインの先にある「ジュノン」エリアも同様のボリュームが待ち受けていますし、船で渡った後の「コスタ・デル・ソル」や「コレル」を含むエリアには、原作でも話題になった「ゴールドソーサー」もあるので、ここを丸ごと1エリアとするならば10時間どころでは到底納まりません。 このボリュームと密度を喜ぶ人も多いものの、逆に負担と感じる方もいることでしょう。その体験が面白さに繋がっているとはいえ、原作のペースと比較するとあまりに膨大です。また、広大な世界の探索を、誰もが望んでいるわけではありません。広域の探索は気が重く、プレイ意欲を失う人もいます。 しかし『FF7 リバース』の探索は、その大半が必須項目ではありません。例えばカームからミスリルマイン到達までの範囲で、必ずこなさなければならないのは「チョコボの捕獲と騎乗時の操作方法の学習」ならびに「ワールドレポートのチュートリアル」のみです。 たっぷりの寄り道を用意する一方で、本筋だけをまっすぐ目指すこともでき、原作のプレイさながらに直進することも可能です。『FF7 リバース』のボリュームは、メインの1本がひたすら太いわけではなく、「肉付けされたメインストーリー」と「たっぷりの寄り道要素」が織り合わさって“太さ”を形作っています。 寄り道をどれだけ楽しむかは、全てプレイヤー次第。メインストーリーだけを追いかけると、レベルが足りずに苦労するかと思いますが、そこは『FF7』を含めたRPG全般に共通する部分なので、本作だけに見られる問題ではありません。自分のペースで「メインストーリー」と「寄り道」の配分を調整できるのは、原作ファンにも助かるとっつきやすさです。 <cms-pagelink data-page=”3” data-class=”center”>前作よりも進化した「バトル」には、コマンド派も楽しい「クラシック」が健在</cms-pagelink> ■「連携アクション」の恩恵でバトルの楽しさが向上 原作と比べて大きく変わった点は、フィールドの広域化や寄り道要素だけに限りません。特に大きなポイントのひとつは、バトルシステムでしょう。 『FF7 リメイク』の時点で、「ATB(アクティブタイムバトルシステム)」によるコマンドバトルとアクションを組み合わせたゲームシステムに進化しており、『FF7 リバース』もその基本を前作から受け継いでいます。 その主幹となる要素は『FF7 リメイク』からの継承なので、前作のバトルが気に入った人は、そのまま『FF7 リバース』でも楽しめることでしょう。かといって、前作のバトルで物足りなかった人が、本作でも同じ感想を持つとは限りません。 まず、レッドXIIIのプレイブル化、ユフィやケット・シーの加入で、パーティ構成の幅がぐっと増しました。取得するアビリティのおかげで、バトルの立ち回りは各キャラごとに大きく違っており、キャラを変えるだけでもなかなかに刺激的です。 また新要素が追加されたことで、『FF7 リバース』のバトルが密度を増したように感じました。特に、パーティメンバー同士が繰り出す「連携アクション」は攻撃から防御まで多彩に揃っている上に、ATBゲージなどのリソースを一切消費しないのでいつでも自由に繰り出せます。 原作の『FF7』は、ATBが溜まると行動可能となり、リアルタイムに変化する戦況に合わせ、最適な判断をその都度下す戦略性が求められました。その要素を取り入れつつも、ATBゲージを消費しない通常攻撃、ガードに回避といった要素を取り入れ、ATBによるコマンドとアクション要素の融合を果たしたのが『FF7 リメイク』です。 『FF7 リメイク』は新たなゲーム体験の提供に成功しましたが、ATBゲージの重要性が大きく、通常攻撃は「ゲージが溜まるまでの間を短くするため」という印象が強めでした。しかし『FF7 リバース』で導入された連携アクションのおかげで、「ATBゲージが溜まるまでの間」にメリハリが生まれ、戦闘自体の楽しさを引き上げてくれたように感じます。 攻撃系の連携アクションは、近接キャラでは手が出しにくい飛行系モンスターを殴りやすくなったり、通常攻撃を上回るダメージを与えられたりと、嬉しい効果が多々。また、防御系連携アクションを上手く使えば、被ダメージを抑えたり、守りを固めつつ攻撃に転じたりと、戦いの流れを上手くコントロールすることも可能です。 アクション要素が増えても大丈夫! 『FF7』ライクなATBコマンドバトルの楽しさも健在 連携アクションひとつをとっても、『FF7 リメイク』から更にバトルが進化したことが分かります。しかしバトルの要素が増えたことで、アクションが苦手なユーザーからすれば、新たなハードルが立ちはだかった状況とも言えるかもしれません。 原作の『FF7』は、(アクティブの場合)素早い判断と迅速なコマンド入力も重要でしたが、アクション要素とまでは言えないものでした。しかし『FF7 リバース』のバトルはかなりアクション性が高く、攻撃はもちろん防御やガードもリアルタイムにこなさないと、強敵との戦いに苦戦を強いられていまいます。 しかし、必ずしもプレイヤーがアクションに挑む必要はありません。バトルモードの設定を「クラシック」に切り替えれば、アクション全般を自動操作に任せ、プレイヤーはコマンド入力のみ行うだけで強敵と十分渡り合えます。 「クラシック」だと、プレイヤーの操作と比べて手数は落ちますが、ガードが固めなのでHPの減りがかなり抑えられます。プレイヤーはATBゲージが溜まるまで静観できるので、無闇に慌てる必要もなし。コマンド選択中は時間の流れが極端に遅くなるので、的確な判断を下す余裕も十分あります。 実際に「クラシック」で遊んだところ、画面上では敵・味方が激しく入り乱れるものの、ATBゲージの溜まり具合と戦況を比較し、適時コマンドを入力するだけで、戦闘がサクサクと進みました。 自分が直接操作してがむしゃらに攻撃ばかり行うと、被ダメージも大きいのですぐ窮地に陥ります。そうした雑なプレイと比べると、「クラシック」の立ち回りは堅実で、ピンチに陥るまでに対策できたり、対処する余裕を作ることも可能でした。 プレイ感そのものが……とまでは言えませんが、「ATBゲージが溜まるまで戦況を見守り、判断を下す」という「クラシック」でのバトルは、原作のプレイテンポと近いようにも感じます。「バトルの表現が派手なコマンドRPG」として遊んでも、十分楽しめる手応えだと思います。 敢えて難点を挙げるなら、「クラシック」の自動操作は守り重視なので、プレイヤー操作時と比べると戦闘にかかる時間自体は長めです。この点を「時間がかかる」と感じるか、「じっくり考えられる」と受け止めるかで、「クラシック」に対する印象が大きく変わります。 ただ、『FF7』のような「ATBゲージを使いこなすコマンドバトル」に焦点を絞るプレイを本作でも楽しめるのは事実。アクション要素があるものの「原作ファンが置いてけぼりになる」とはならず、「クラシック」の存在がより多くのユーザーを楽しませてくれることでしょう。 原作ファンのユーザー視点でチェックした『FF7 リバース』レビュー、今回は以上となります。「探索」では寄り道要素が増え、それぞれが連動する指向性の高さでプレイ意欲をかき立てる一方、本筋だけを進めるストイックなプレイも可能と、任意で楽しみ方が選べるのが嬉しい点です。 また「バトル」は、連携アクションの導入でメリハリが生まれ、アクションする楽しさを倍増。その上で、コマンドバトルだけに専念する「クラシック」もしっかりと受け継いでいるので、原作ファンも本作のバトルを十分楽しめます。 今回は詳しく言及しませんでしたが、『FF7』と言えば数々のミニゲームも印象深いところ。その魅力は『FF7 リバース』にも受け継がれており、カットどころかいずれもパワーアップしていて、原作に負けないほど記憶に残るものばかりです。こうした原作の魅力を丁寧に拾う点も、本作が持つ素晴らしさのひとつです。 これはひとりのファンとしての主観的な感想ですが、探索もバトルも手応えが大きく増した『FF7 リバース』は、“原作の再現”という枠に留まっていないように感じます。むしろ印象としては、原作を遊んでいた時、頭の中に広がっていた「好き勝手に想像していた『FF7』」の実体化、に近いのかもしれません。 想像の中にしかなかった『FF7』が、実際に遊べるようになった──大げさな物言いかもしれませんが、これが『FF7 リバース』に対する筆者の率直な感想です。“現実になった夢”が、ここにありました。 総合評価:9/10 良い点 ・RPGらしい寄り道要素が格段に増え、それぞれが連鎖してプレイ意欲を大いに促す ・探索要素は分かりやすく、導線がしっかりとしている ・寄り道は必須要素ではなく、物語を中心に楽しむプレイも可能 ・「連携アクション」の導入で、アクションバトルにいい意味で緩急がついた ・前作から引き続き「クラシック」を採用。今風のグラフィックを楽しみつつ、コマンドバトルに注力できる 悪い点 ・フィールド探索のおける「未知の発見」は少なめ。オープンワールド的な魅力を期待すると肩すかし ・バトルのアクション操作は、一定以上の腕前が求められる。攻撃一辺倒だとピンチに陥りやすいので注意が必要 ・「クラシック」はコマンドRPG派にお勧めのモードだが、戦闘の時間がかかりがち 「Game*Sparkレビュー」ではハードコアゲーマーなライターから読者に向けて、オリジナルレビューをお届けします。対象となるタイトルはAAAからインディーまで、ジャンルやプラットフォームを問わず「ハードコアゲーマーのアンテナが反応するゲーム」です。 このレビューでは、3段階評価をベースに「良い点」「悪い点」を挙げながら総評を下します。最低評価は「難アリ/オススメできない」、中評価は「ふつう/そこそこオススメ」、最高評価は「とても面白い/とてもオススメできる」に当ります。「プレイレポート」として公開している記事では、本企画と同様の評価を付けません。また、記事の性質上、ストーリーなどの「ネタバレ」を含む場合がありますので、閲覧の際はご留意ください。 「Game*Sparkレビュー」は「PR記事」と一切の関係を結ばず、すべての評価内容がライターの価値観に基づきます。特定の企業やプロモーション、ユーザーコミュニティにも影響を受けません。 マルチプラットフォームで展開されている作品においては、対応している機種のうちのひとつのエディションのみをプレイし、評価します。そのため、本文内でプレイした際の使用機種についても明記しています。
Game*Spark 臥待 弦(ふしまち ゆずる)
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