異文化理解マーケティングで日豪つなぐ新進気鋭の起業家「マーケティングカンパニーdoq創設者」作野善教さん=世界各国で活躍する日本のビジネスパーソン 〈2〉 ■オーストラリア編■
この連載は世界の日系メディアと協力し、各国で活躍する経営者などにインタビューしてお互いに掲載する連載企画。1月はブラジル編、2月はオーストラリア編、3月はアメリカ編、4月はカナダ編の予定。各地で活躍する日本人の今の姿をお届けする(編集部)。取材:石井ゆり子(日豪プレス) オーストラリア連邦東南部に位置し、同国で最も工業化されたニューサウスウェールズ州(以下、NSW州)の最大都市シドニーで、マーケティング・カンパニーdoqを創業してグループ・マネージング・ディレクターを務める作野善教さん(さくのよしのり、46歳、兵庫県出身)。2009年の創業以来、異なる文化と背景を持つ多様性に富んだチームと共に、開業する前の経歴も含めると20年間で50社以上の越境マーケティング戦略立案を手掛け、日本発ブランドを世界中の消費者に訴求する「クロスカルチャー(異文化理解)・マーケティング」の重要性を唱えます。趣味はサッカー、スキー、旅、食べ歩きという作野さんに、オーストラリアでビジネスを立ち上げた経緯や今後の展望など、話を伺いました。
─オーストラリアに渡った経緯は?
移住の理由は、ひと言で言うと「家族愛」でしょうか。妻はオーストラリアのパースで育ち、日本で仕事をしていましたが、私が外資系広告代理店ビーコン・コミュニケーションズから、本場の空気に身をおいてみようと親会社であるレオバーネットに転籍するために米国に移る際、彼女は日本での仕事を辞め、何の縁もないシカゴについてきてくれました。その後、彼女がシドニーでのポジションを獲得し、彼女の家族もパースに住んでいたため、今度は私が彼女の気持ちに応えるためにオーストラリアに移住することを選んだのです。
─起業を決断した背景にはどのような思いがあったのですか。
順調に構築したアメリカでのキャリアを辞め、職もない、コネや友人も全くいないシドニーで、今後自分はどうなるんだろうと考えたこともありました。しかし、せっかく見知らぬ土地に来たのであれば、これまでに培ってきた経験をもとにゼロから新しいチャレンジをしてみようと奮起し、シドニーに来て半年後の2009年6月に自宅のベッドルームからdoqを立ち上げたのです。 その決断の背景には、私が阪神・淡路大震災の被災者であることが関係しているかもしれません。当時私は高校2年生だったのですが、一夜にして街の景色が変わり、少なくない数の友人・知人を失い、これまで当たり前だと感じていた生活が、決して続くわけではないと知った実体験はいまでも強く心の中に残っています。同時に、いつ途切れるか分からない人生の中で、悔いのないチャレンジをしていこうという私の行動原理となっています。 幼少から高校卒業までサッカー漬けの生活を送っていた私がそもそも海外での仕事に興味を持った大きなきっかけは、立命館大学在学中に参加した吉本興業のインターンシップ・プログラムでした。業務内容は、外国人アーティストの来日公演を手伝うというものだったのですが、その一連の業務を通じて「日本と世界をつなぐ」ビジネスの面白さを肌で感じました。