受刑者への選挙権制限「合憲」判決 「受刑者だけの問題ではない」弁護側は内容に憂慮示す
「次のターゲットは別の誰かかもしれない」
たとえ刑務所内にいても、国政選挙に参加したい、意思表示をしたい、そう願う受刑者は少なくないだろう。 会見では、原告である男性からも「訴えが認められなかったのであれば、非常に残念。全ての受刑者のために最後まで戦います」とコメントが寄せられた。男性は、2019年に詐欺罪で懲役7年の実刑判決を受け、長野刑務所に服役中。選挙権を停止され、21年の衆院選などで投票ができなかった。 吉田弁護士は、受刑者には、凶悪な犯罪者以上に窃盗や薬物使用など軽微な罪の犯罪者が多いと説明。その上で、「(受刑者は)十分な環境や教育などに恵まれず、社会に居場所がなかったのではないか。そういう人たちを選挙からも排除していいのか」と訴えた。 さらに、「選挙に参加する資格・適性がないと疑うに足りるやむを得ない事由がある」とする判決文について、「選挙に参加する資格・適性の有無は誰が判断するのか。国会が判断する。抽象的で緩やかな“あいまい基準”で人から選挙権を奪えるのであれば、受刑者だけの問題ではない。次のターゲットは受刑者ではなく別の誰かかもしれない」と語った。 受刑者の選挙権をめぐっては、2013年に大阪高等裁判所が「憲法違反」と判断。2017年には広島高等裁判所が「合憲」とするなど判断が分かれている。
榎園哲哉