内閣府で業務見直しの動き なぜ「肥大化」したのか?
政府・自民党が内閣府の担当業務の見直しに着手しました。内閣府は、2001年に橋本龍太郎政権が「縦割り行政」の排除や行政組織のスリム化・効率化を目的に進めた中央省庁再編の目玉組織で、旧経済企画庁、旧総理府、旧沖縄開発庁の3つの府庁を統合して誕生した巨大官庁です。法律では、その役割を「重要政策に関する内閣の事務を助ける」ことなどとしています。いわば、政治の力を強くし、首相にリーダーシップを発揮して重要課題に取り組んでもらうために設置された組織です。なぜ今その内閣府の業務を見直そうとしているのでしょうか。
複数の省庁にまたがる政策を立案
理由のひとつは、まず内閣府の仕事が増えすぎたことです。 内閣府は3つの府庁に加え、旧総務庁、旧科学技術庁、旧国土庁の業務の一部も引き継いでいるため、もともと仕事が多い官庁でした。また、首相官邸が主導する政府の重要政策をサポートするのが本来の役割なので、複数の省庁にまたがる政策の立案や調整を行わなければならず、多くの仕事を抱える傾向があります。 このため、内閣府には他省庁や民間企業から出向してきた職員も多く、その業務は経済財政諮問会議をはじめ、防災、科学技術政策、少子高齢化対策、沖縄振興、北方領土問題、食品保護、自殺対策、さらに宇宙政策や原子力損害賠償にまで及びます。ほかの省庁と違い、大臣も1人ではありません。内閣府には「特命担当」という複数の大臣がいて、設置当時は沖縄及び北方対策担当や金融担当など6人でしたが、第2次安倍政権では8人。特命担当大臣には比較的当選回数が少ない政治家が多いともいわれています。
内閣機能の強化が狙いだったが
とはいえ、なぜ内閣府の仕事はそんなに増えたのでしょうか。その理由は、行政改革や首相官邸の主導がうまくいっていないため、という見方もあります 行政組織のスリム化、内閣機能の強化などの行政改革は1980年代にイギリスで始まったもので、小泉政権が進めた「小さな政府」などもその考え方に基づいたものでした。首相直属の内閣府は、その中心となるべき組織だったのです。しかし、政治が主導するという名のもと、首相が交代するたびに新しい政策課題が持ち込まれ、内閣府の担当する仕事もどんどん増えていったのです。消費者保護や食品安全、原子力保護損賠賠償支援などの業務は内閣府のスタート時にはないものでした。最近でも、国家戦略特区法案の成立を受けて、国家戦略特区担当の大臣が加わっています。 政治の力を強くし、内閣府の設置によって縦割り行政などのムダをなくすはずだったのに、むしろ効率が悪くなってしまった面もあるわけです。そこで、内閣府が担当する仕事を見直し、もう一度行政改革について議論を進める方針となったのです。
実現はなかなか困難な「行政改革」
ただし、橋本政権が進めた行政改革は、1996年に始まったものの、中央省庁を再編するまで5年以上の時間がかかりました。「政治」と「行政」の関係の問題は、これまでさまざまな改革が行われてきたにもかかわらず、なかなか実現してこなかったテーマでもあります。行政改革を今後どのように進めていくのか、安倍政権はこの問題も手腕を問われることになりそうです。 (真屋キヨシ/清談社)