『SPY×FAMILY』公開目前に出揃った中ヒット作 一方で埋もれてしまった作品も
12月第3週の動員ランキングは、ウォルト・ディズニー・カンパニー創立100周年を記念して製作された『ウィッシュ』が初登場1位。オープニング3日間の動員は43万4000人、興収は6億1200万円を記録。今年のディズニー配給作品としての比較対象は、アニメーション作品と実写作品の違いはあるものの、ディズニーファンをターゲットにした王道作品という点では6月に日本公開された『リトル・マーメイド』となるだろう。『ウィッシュ』のオープニング成績は興収比で『リトル・マーメイド』の86%。『リトル・マーメイド』の最終興収は約33.7億円なので、30億円超えがひとまず目安となりそうだ。 【写真】埋もれてしまった『屋根裏のラジャー』 外国映画の国内興行が低迷する中で十分に健闘と言える成績なのだが、やはりディズニーのアニメーション映画、とりわけクリスマスシーズンに公開される肝入りのアニバーサリー作品であることを考えると、もうかつてのような横綱興行が連続していた時代が過ぎ去ってしまったことを痛感せずにはいられない。 一方、正月興行の本命と目されている『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』の今週末公開を前にして、同日公開だった『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』を逆転して先週末も2位をキープした『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』、ディズニー作品のメインターゲットでもあるファミリー層の間で着実に支持を広めている『パウ・パトロール』の新作映画『パウ・パトロール ザ・マイティ・ムービー』、入場者特典やモノクロ版公開も決定してロングラン体制に入った『ゴジラ-1.0』、相変わらず口コミ人気の衰えない『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』、ここにきて『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』同様に口コミでの人気が広まってきている映画『窓ぎわのトットちゃん』と、ランキングのトップ8は群雄割拠の状態に。近年、1作か2作のメガヒット作品に頼りっきりの興行が続いていたが、一時的な現象にせよ映画興業界に健全さが戻ってきたと言えるだろう。 そこに埋もれてしまったのが、先週末公開されて初登場9位となった『屋根裏のラジャー』だ。オープニング3日間の動員は4万9600人、興収は6800万円。配給の東宝は、その前週に映画『窓ぎわのトットちゃん』、その翌週に『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』と、この12月は3週連続でファミリー層をターゲットにしたアニメーション作品を公開することに。その背景には、当初2022年の夏に予定されていた『屋根裏のラジャー』の公開が、制作の遅れによって1年以上後ろ倒しになってしまったという事情があるわけだが、アニメーション作品制作の難しさ、そして映画興行の怖さを見せつけられた結果となってしまった。
宇野維正