「おもてなし」と「複合化」 ── 日本の喫茶店文化の歴史をたどる
戦後喫茶店の栄枯盛衰
戦後、高度経済成長に伴い、喫茶店が続々と作られ、昭和35年(1960)年頃には全国で10万店近くありました。「第一次喫茶店ブーム」の時期には、リーダーに合わせて客がみんなで合唱する歌声喫茶が人気を呼びました。新宿の「灯(ともしび)」は昭和29(1954)年の開店。美輪明宏さんで有名な「銀巴里」などのシャンソン喫茶は、歌手の歌が身近で聞けるライブ演奏の店でした。その他、ロカビリー喫茶、ゴーゴー喫茶、美人のウエイトレスをアピールした美人喫茶、ビジネス喫茶(モーニングセットやランチメニューが特色)、テレビ喫茶なども出現しました。 昭和39(1964)年の東京オリンピックの頃から「第二次喫茶店ブーム」となり、同伴喫茶、深夜喫茶が生まれました。漫画喫茶のほか、電話喫茶やコピー喫茶なるものもありました。昭和53(1978)年頃にはゲーム喫茶のほか、占い喫茶、歌謡曲喫茶もありました。画廊喫茶、アンティーク喫茶、民芸喫茶も、おなじみの喫茶店になりました。 これらのブームを経て、喫茶店の数は昭和60(1985)年には17万店に迫ります。しかし昭和55年(1980)年に出現した、150円という低価格、高回転(客の滞在時間が短い)で、セルフサービスの「ドトールコーヒー」などが人気を集めるようになり、いわゆる昭和の喫茶店は衰微していきました。平成2(1990)年頃には11万店となっています。また平成8(1996)年に紙コップでドリンクを提供し、全席禁煙にした「スターバックスコーヒー」(タリーズなども含め、シアトル系カフェと呼ばれる)がオープンし、平成16(2004)年には約9万店、平成21(2009)年には約8万店に減りました。
“付加価値”が魅力のカフェが続々登場
平成12(2000)年頃に、カフェブームが起きました。ここでいうカフェとは、オーナーの個性やこだわりを生かした、特定のコンセプトを持つ、若い世代を主なターゲットとした喫茶店です。ただしカフェはセルフサービス形式の店、喫茶店はフルサービス形式の店、と業界では区別しているようです。 “付加価値”が多くのカフェの魅力となっていて、ネットカフェ(インターネットカフェ)、日本茶カフェ、ペットカフェ(猫カフェ、犬カフェ)、ブックカフェ、ギャラリーカフェなどの個性的なカフェを、近年よく見かけます。コスプレ喫茶の一つであるメイド喫茶のオープンは平成13(2001)年3月、秋葉原の「キュアメイドカフェ」でした。 文化的なジャンルでは、古道具カフェ、雑貨カフェ、文房具カフェ、おもちゃカフェや水族館カフェなどもあります。環境や建物や内部空間に特色があるカフェとしては、古民家カフェ、蔵カフェ、洋館カフェ、屋根裏カフェ、田舎カフェ、リゾートカフェなど。その他、アパレルや家具メーカーなどによるインショップカフェ、アンテナショップ型カフェ、旅をテーマにしたラウンジカフェ、ネイルサロンのあるネイルカフェ、スポーツカフェ、お寺カフェや神社カフェのほか、介護に取り組む介護カフェも全国に20店生まれているそうです。