被安打が「投ゴロ」に……珍しいプレーが続いたL対F戦/元パ・リーグ審判員 山崎夏生に聞く
【山崎夏生のルール教室】 【問】7月9日の西武対日本ハム戦(ベルーナ)は珍プレーが続出しました。まずは野村大樹選手(西武)が5回裏に右中間を破る打球を放ち二塁へ達しましたが、その直後にボールは一塁に転送されてアウト。一塁ベース空過でのアピールアウトでした。記録上はセンターゴロになるのでしょうか? またアブレイユ投手(西武)は9回表二死無走者でカウント1-2から4球目を投じましたが、その直後に長川真也球審はタイムをかけ、「反則投球のためボールとします」と場内放送をしました。ただどうして反則投球だったのか説明がなく、疑問が残りました。 2024年7月9日(火)西武vs日本ハム ベルーナドームの試合データ 【答】この試合はちょうど自宅でテレビ観戦をしていましたが、いずれもナイスジャッジでした。 まず塁の空過はアピールアウトですから、審判が勝手にアウトを宣告してはなりません。これを見逃さなかった一塁手のマルティネス選手(日本ハム)と牧田匡平一塁審判は「あっぱれ!」。なお、記録上はたとえスタンドインした打球でも一塁空過ならばすべて「投手ゴロ」。長打の場合は空過前の塁打、例えば三塁空過ならば二塁打となります(9.06.d)。有名な例では長嶋茂雄選手(元巨人)が新人年だった1958年に一塁の空過で本塁打が取り消しとなり、打率.305、盗塁37ながら本塁打29本でトリプルスリーを逃してしまいました。 勘違いしがちなのは通常の内野ゴロなどで打者走者が送球よりも早く一塁に到達しながらも塁を踏まなかったときです。こういったケースではアピールアウトではなく、塁審は即時にアウトを宣告します。こうしないとその後のプレーが混乱しますし、そもそも次塁へ進む際に経由する塁を踏み忘れたのではなく、到達塁を踏まなかった、つまりノーベースと解釈されるからです。もちろん一塁手も塁を踏んでいなければジャッジはせずに、どちらが先に塁を踏むか、あるいはタッグするかを見極めてから判定を下します。 反則投球の件は、アブレイユ投手がきちんとした投球姿勢を取らずに投げた、いわゆるクイックリターンピッチによるものです。走者がいればボークとなりますが、無走者でしたからボールを宣告されました。 なお、反則投球(ボーク)は捕球されるまではインプレーですから、打者は打ってもいいのです。その結果、安打、失策、四球、死球、そのほかで一塁に達し、かつ、ほかのすべての走者が少なくとも1個の塁を進んだときにはそのプレーは生かされます(6.02.a.ペナルティ)。 ※訂正:上記の記事中で「すべて投手ゴロ」とありますが、インプレー中でしたら送球の起点となった野手のアピールとなります。今回のケースではタイムがかかり、投手から一塁への送球でしたので「投手ゴロ」となりました。もしもセンターからの直接の送球によるアピールでしたら「センターゴロ」となります。訂正し、お詫び申し上げます。
週刊ベースボール