好調ソニーが「かつての不調」から脱却できたワケ。テレビ、オーディオは“売上の2割”に過ぎない
業績悪化でソニーショックを引き起こす
このように多角化を進めていたものの、2000年当時においてオーディオ、テレビ、ビデオといったエレクトロニクス事業は、依然としてソニーにおける売上高の7割を占めていました。これらは新興国勢の台頭もあり、日本の輸出が伸び悩んでいた分野です。 90年代後半から2000年にかけてソニーの利益率は低下し続けました。そして2003年3月期の決算で翌期の減益予想を発表したのを機にソニー株はストップ安となり、国内市場全体に波及して「ソニーショック」を引き起こしました。
国内事業はスリム化もゲーム事業が拡大
ソニーは2000年以降、利益率の改善を進めるべくスリム化を進めました。2000年3月期末時点で約19万人いた従業員は幾度と大規模なリストラを行い、20年3月期末時点では11万人にまで減少しました。20年間で人員の40%以上を削減したわけです。中高年の社員に対しては「キャリアデザイン室」という名の追い出し部屋で退職を勧告したと報道されています。 国内工場については、テレビ、ビデオ機器の主力工場を次々に閉鎖しました。2014年にはPCのVAIO事業から撤退。10年連続で赤字だったテレビ事業に関しては台数・規模を追う姿勢を止めて高付加価値路線に切り替え、14年に黒字化を達成しました。 一方でPlayStation 2、3……と新型ハードを出し続けたことでゲーム事業は規模を拡大していきました。2020年に発売し、国内では売れないハードと認識されているPlayStation 5も売上台数の9割が海外であり、高い人気を誇ります。また、1980年から本格化させたイメージセンサーもソニーの中核を担うようになりました。
ゲーム事業の好調と円安で事業規模の拡大が続く
近年の業績推移(2021年3月期~24年3月期)は次の通りです。主にゲーム事業が業績を牽引していますが、この間に音楽、映画事業そしてイメージセンサー事業も売上を拡大しました。ソニーの海外売上比率は約7割であり、円安も増収に寄与しています。 【ソニーグループ株式会社(2021年3月期~24年3月期)】 売上高:8兆9987億円→9兆9,215億円→10兆9,744億円→13兆208億円 営業利益:9,553億円→1兆2,023億円→1兆3,024億円→1兆2,088億円 いわゆるテレビ、オーディオといったかつてのエレクトロニクス事業は売上の2割に過ぎず、ソニーの収益構造はかなり多角化しています。24年3月期における各事業の売上高は以下の構成です。 ゲーム関連事業:4兆1,730億円 音楽事業:1兆5,950億円 映画事業:1兆4,867億円 テレビ・オーディオなどハード関連事業:2兆4,149億円 イメージセンサー・半導体関連事業:1兆5,039億円 金融事業:1兆7,607億円