高卒ルーキーではひと握り。みなが目指す「開幕一軍」【山本萩子の6-4-3を待ちわびて】第105回
まもなく球春到来。ベテランも若手も年齢も過去も関係なく、選手たちは一軍を目指してしのぎを削っています。開幕を一軍で迎えることが、キャンプでの第一の目標と言っていいでしょう。 【写真】山本キャスターの最新フォトギャラリー ということで今回は「開幕一軍」についてお話しさせてください。 特に高卒でプロ入りした選手の中で、開幕を一軍で迎えられる選手はひと握りです。正確な数字はわかりませんが、近年だと大谷翔平選手、藤浪晋太郎投手などメジャーでも活躍するような一部の選手、あるいはオコエ瑠偉選手のように、秀でた身体能力を持つ選手に限られています。 先日、お仕事で松坂大輔さんとご一緒したのですが、「怪物」と呼ばれた松坂さんでさえ、西武1年目は開幕を一軍で迎えることはありませんでした。 高卒ルーキーが開幕を一軍で迎えることが難しい理由は、いくつか考えられます。一番大きいのは、プロ野球選手として戦っていくための準備がまだできていないから、ということでしょうか。考えてみたら、キャンプが始まる頃は高校を卒業する前ですし、「学生気分が抜けない」と言われても実際にまだ学生なのですから、そんな指摘は的外れでしょう。 球団は高校生を「即戦力」と期待して獲ることは少ないでしょう。即戦力だったら大学野球、社会人野球経験者を指名したほうが活躍する可能性が高いでしょうから。高卒ルーキーは「球団の将来を担う選手」として期待されているのです。 我がヤクルトの村上宗隆選手も、ルーキーイヤーの開幕は二軍で迎えています。私は、村上選手の1年目の二軍キャンプに取材でお邪魔したことがあります。マスコミは少なかったですが、車椅子に乗った野村克也さんが激励に来ていたのが印象に残りました。注目されている選手をしっかり二軍で育てて一軍へ、という明確な意図を感じましたし、実際に村上選手はシーズン中に一軍に昇格しています。 野球選手になるのは、少年時代に想い描いた夢の舞台に立つということです。おそらく彼らのほとんどが、昔からプロになることを夢見て野球に打ち込んでいたことでしょう。しかし、プロになることがゴールではなく、あくまでスタートであることをキャンプで思い知らされるんでしょうね。 いい意味で刺激があるでしょうし、気後れしてしまうこともあると思います。4番として結果を残すようになった村上選手でも、WBCで大谷選手と対面して感動したくらいですから、プロ入りした高校生が先輩たちに圧倒される様は想像がつきます。