「テロ関与」の国連組織に、日本が支援再開の「大甘」方針…ハマスとの関係の根深さを軽視するな
<UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)のラザリーニ事務局長と会談した上川外相は資金拠出再開の方針を示したが> 【 山田敏弘(国際ジャーナリスト)】
上川陽子外務大臣が3月28日、日本を訪れているUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)のフィリップ・ラザリーニ事務局長と外務省で会談した。 【写真】「爆弾ベルトを付けてユダヤ人の戦車に火をつけろ」…ガザの教科書に書かれた過激な記述とイラスト UNRWAをめぐっては、パレスチナ自治区ガザのUNRWA職員の約12人が10月7日に発生したイスラエルへの大規模テロ攻撃に関与していたことで、各国政府が同組織への資金提供を停止している。停止したのは、アメリカ、オランダ、オーストラリア、オーストリア、カナダ、イギリス、ドイツ、イタリア、スイス、フィンランドなどだ。 だが NHKの記事は、上川大臣は「停止している資金拠出の再開に向けて最終調整を行う方針」だと報じている。もちろん、ガザで起きている人道危機は深刻で、市民にとって外国からの支援が不可欠なのはわかる。ただUNRWAへの資金拠出再開は時期尚早ではないだろうか。 筆者は先月、イスラエルでガザ地区の近くのテロ現場などを訪問し、現地取材を行なった。その際に数多くの関係者に話を聞く中で、パレスチナ武装組織のハマスやパレスチナ・イスラミック・ジハード(PIJ)のテロリストらが、UNRWAに深く入り込んでいるという実態を耳にしている。 そもそも、UNRWAは、ガザ地区で1万3000人ほどを雇用していた。そして地元の学校や医療機関、社会福祉サービス組織などを運営し、地元の人たちを人道的に援助する組織として、日本や欧米諸国から11億ドル(約1700億円)以上の支援金を受け取っていた。にもかかわらず、その人命を救うはずの組織に、テロで無実の人の命を奪うテロリストが数多く混じっていたのである。 ■「UNRWA職員の450人以上が軍事作戦に関与」 イスラエル軍のダニエル・ハガリ海軍少将は、「ガザのUNRWAで働いていた職員のうち、450人以上が軍事作戦に関与していた。これは組織的で系統的なものであり、『われわれは知らなかった』と言い逃れできるものではない」と語っている。 またイスラエルの国連大使ギラッド・エルダンも「ガザでは、国連自体がテロ組織なのです」と、国連の総会で発言している。 こうした事実を受けて、UNRWAへの最大資金拠出国だったアメリカも3月23日に、今後1年間におよぶ資金提供停止を議会で可決して、ジョー・バイデン大統領がその法案に署名したところだった。 アメリカの政府関係者は、「ハマスのメンバーは、UNRWAが活動を行うすべての部門で重要なポジションに就いている。イスラエルに対するテロ活動に積極的に関与し、10月7日のイスラエルへのテロ攻撃に積極的に参加していた者もいる」と語る。さらにその事実を、UNRWAも認識していると言う。 筆者が入手した西側情報当局などが関わった今回のハマスのテロに関する報告書によれば、10月7日の大規模テロに参加していたメンバーで、UNRWAが雇っていたテロリストたちは、「ソーシャルワーカー」「学校の校長」「副校長」「小学校教師」「算数教師」「アラビア語教師」「学校のカウンセラー」「ヘルスセンター職員」などだ。