阪神・藤浪が森との後輩対決に勝ってMVP
3イニング以内に限定されているピッチャーは、よほどのインパクトがない限りMVPに選出されにくい。ピッチャーとしてのMVPは、2013年の第1戦の巨人・澤村拓一以来。阪神の投手としては1971年に江夏豊氏が、伝説の9連続三振の快挙を成し遂げて以来の出来事である。江夏氏は、1980年にもMVPを獲得しているが、このときは広島のユニホームを着ていて、9回一死満塁からリリーフ。三者連続三振に斬って取っての受賞だった。藤浪は、虎の伝説の左腕との距離を、また一歩縮めたことになる。 「賞をいただいて光栄です。ファンの方に一番に楽しんでもらえるようにと思ったんですが、それがいい結果につながってよかったです」 MVPの賞金は300万円。 どうしますか?と聞かれた藤浪は、「どうしましょうかね。両親にあげます」と断言してスタンドから大きな拍手が起きた。 今季は1勝4敗とスタートに苦しんだが、5月14日のヤクルト戦で完投勝利して覚醒すると、そこから6連勝。現在、7勝5敗、防御率2.62の好成績を残して、阪神のローテーションの軸となっている。 元阪神スコアラーだった三宅博さんは、「腕が縦振りになったことで左打者へシュート回転するような悪いボールがなくなった。縦に落ちる変化球に切れも出ている。体の使い方を覚えたのか、それが安定感につながっている」と、藤浪の変化を認めている。 確かに今季は、対左打者の被打率を.240に抑えこむなど、弱点がなくなっている。 夢の球宴での輝きは、藤浪の3年目の進化を象徴するような結実となった。