店員と特殊詐欺を防ごうと奮闘する谷口店長（左、鳥取市河原町で）

　特殊詐欺を未然に防いだとして鳥取県警から4回、感謝状を贈られたコンビニエンスストアの店長がいる。詐欺の手口を徹底的に調べ、気になる客には積極的に声をかけてきた。「お客さんは家族のような存在。この店から絶対に詐欺被害を出さない」との思いが、犯罪阻止につながったという。（藤川泰輝） 店員間の連絡ノートで、詐欺被害防止を呼びかける

　ローソン鳥取河原町店（鳥取市）で店長を務める谷口直樹さん（47）で、元々特殊詐欺の知識は「オレオレ詐欺」ぐらいしかなかった。

　別店舗の店長だった2013年、警察主催の特殊詐欺の対応訓練に参加した。レターパックを使って現金を送らせるという想定だったが、警官から「ほかにもいろいろな手口があります」と聞き、関心を持つようになった。

　詐欺被害を伝える新聞記事をくまなく読み、「この人はなぜ、だまされたのか」と被害者の置かれた状況や気持ちを想像する。それが、客への接し方の参考になった。

　普段から常連客が多いため、見知らぬ客に気を配る。県内では、パソコンウイルス除去費用や宝くじの当選金受け取りのための費用を名目に電子マネーカードを購入させる詐欺被害が発生している。このため、購入しようとする高齢者や、高額のカードを買おうとする若い人にも、使用目的を尋ねることを欠かさない。

　有料サイトの閲覧料金と偽る詐欺には「私も料金を請求されたことがあります」と作り話で寄り添って詐欺の疑いを優しく指摘する。

　こうした対応が功を奏し、別店舗時代も含めた15～24年の計4回、いずれも電子マネーカードを購入しようとした高齢男性に声をかけ、被害を防いだ。谷口さんは「被害者は高齢者が多く、相談する相手がいなかったように受け止めた。一言でも会話をすることが大事だと感じた」と振り返る。

　新たな取り組みとして5月から、電子マネーカードをまねた名刺大のカードを売り場に置いた。「パソコンウイルス修理代金お支払い専用」と「還付金受け取り・当選金受け取り・その他行政機関への手数料専用」の2種類で、自ら作成した。