アニメ史上最高の製作費「アーケイン」シーズン2がついに世界配信
人気ゲーム「リーグ・オブ・レジェンド」を原作としたNetflixアニメ「Arcane(アーケイン)」のシーズン2が、まもなく世界配信される。ゲームの販売元であるライアットゲームスが投じた製作費は1億ドル(約150億円)に迫り、宣伝費を含めた2シーズンの総投資額は2億5000万ドル(約375億円)に達する見込みだ。米バラエティ誌の報道によると、この配信アニメ史上最高額となる巨額投資の背景には、ゲーム企業の次なる一手を賭けた壮大な野望があったという。 世界最大級のゲーム企業に成長したライアットゲームスは、「リーグ・オブ・レジェンド」で月間1億8000万人のプレイヤーを抱え、年間30億ドル(約4500億円)規模の収益を生み出している。ゲーム本体は無料でプレイできるものの、ゲーム内で販売される「スキン」と呼ばれるアイテムが収益の大半を占める。同社はeスポーツや音楽分野でも成功を収め、次なる収益の柱として映像コンテンツ事業に参入を決意した。 本作の企画は、プレイヤーサポートチームに所属していたクリスチャン・リンケとアレックス・イーの2人の社員から始まった。2016年、ライアットは彼らに制作の許可を与え、パリの新興アニメスタジオFortiche社とともにパイロット版の制作を開始。それまでFortiche社は同社の音楽ビデオや短編プロモーション映像を手がける程度だった。 シーズン1は1話40分、全9話の大作として制作され、製作費は8000万ドル(約120億円)を超え、宣伝費として6000万ドル(約90億円)が投じられた。すでに巨大なプレイヤーベースを持つ同社が、ドバイの超高層ビル「ブルジュ・ハリファ」でのプロモーションなど、大規模な宣伝活動を展開。当時のニコロ・ローレントCEOが掲げた「21世紀のエンターテイメント企業」というビジョンの表れでもあった。 その野心は、ハリウッドへの本格進出という形で具体化する。マーベル映画「アベンジャーズ」シリーズのルッソ兄弟を起用し、実写映画の企画も進められたが、脚本の方向性の違いから500万ドル(約7億5000万円)の違約金を支払って契約を解消。Netflix、HBO、ディズニーなど大手メディア企業から続々と幹部を招聘するも、「アーケイン」以外の映像作品は実現に至らなかった。 2023年5月、ローレントCEOの退任により、その野心的な構想は大きな転換点を迎える。新CEOのディラン・ジャデジャの下、エンターテイメント部門は実質的に解体され、ゲーム事業への回帰が鮮明となった。 シーズン1で投じた巨額の投資の回収も不透明な中、ライアットは品質重視の姿勢を堅持している。共同創業者のマーク・メリルは「プレイヤーの時間に値する作品を作るために必要な投資だった」と自信を見せる。 史上最高額の製作費を投じた「アーケイン」シーズン2は、11月9日にNetflixで世界配信される。