紀平がGPファイナルSPでザギトワ超え理由は3回転アクセルだけではなかった!
大会前にはトリノ五輪、バンクーバー五輪の米国代表で世界選手権3位になったことがあるNBCスポーツ解説者のジョニー・ウィアー氏が2人の長所と短所を比較して「(ザギトワには)自信と少しの成熟が見られる。日本の天才(の紀平)と比べると特にそう。ザギトワは、この秋のグランプリ大会で演技構成点で紀平を21点上回っている」と、演技構成点でザギトワにアドバンテージがあることを指摘していたが、紀平は、その差をしっかりと埋めて見せたのだ。 「スケーティングは主にブレードを氷上に片足ずつ着地させて行いますが、ブレードの向きや傾き、体重移動など、ひと滑りごとに細かい技術が必要になります。紀平さんは、その技術を高めています。その確かな滑りの技術のおかげで、紀平さんのジャンプは、スムーズな踏み切りと着氷へつながり、見事な流れを感じました。ザギトワさんも素晴らしい技術を持ってる選手ですが、僅かながらに今日の演技では紀平さんが上回っていたと思います」と中庭氏。 ザギトワの2回転アクセルにGOE加点がほとんどつかなかったのは、その影響だろう。 ザギトワを含むロシアの有力女子選手のほとんどが、“鉄女”“鬼コーチ”の異名で知られるエテリ・トゥトベリーゼ女史(44)の指導を受けているが、陸上トレーニングでジャンプの形をまず固めるというプロセスに特徴があるという。ミスの少ないフォーム固めはできるが、陸上トレーニングで「スケートの滑りを生かす」という技術やイメージが薄くなってしまう。 そのジャンプを作り上げるプロセスの違いが、GPファイナルという高度な舞台で「滑りの違い」となって出てしまったのかもしれない。 日本のスケーターで紀平と同様に「スケートの質」が優れていたのは、浅田真央氏だという。 紀平が、シニアデビューシーズンに初出場でGPファイナルを制すれば、浅田氏以来13年ぶりの快挙となる。 フリーは、中1日を開けて8日(日本時間9日)に行われる。紀平が最終滑走でザギトワが第4滑走となることが決まった。 紀平が、「点数を見たときはびっくりしました。想像もしていなかった点数です。フリーも自信を持って挑めると思います。ここで気を抜かずにフリーのことだけを考えたいです」と、前向きだったのに対して、追う立場のザギトワは「ナーバスになっていた。最高の演技はできなかった」と反省を口にしライバルの紀平についての質問を受け付けなかった。ここまで連勝したGPシリーズでは、SPで出遅れてフリーで逆転するというパターンだった紀平が初めて逃げ切りのシチュエーションでフリーを迎えることになる。 中庭氏は「SPを1位で迎えるGPファイナルのフリーはこれまでと雰囲気は違うでしょうが、あくまでも紀平さんにとって、ここは通過点だと思います、より高い目標に向けての。今シーズンはミスをすると出来栄え点はもちろん、演技構成点も伸びない、という傾向がよりあります。勝敗を分けるのはそこでしょう」という見方をしている。 2つ入れる予定のトリプルアクセルの成否がすべてだろう。紀平が五輪金メダリストを破りニューヒロインとして、その名を世界へ轟かせる瞬間は、目の前に迫っている。