裏金問題で混迷を極める今だからこそ考える、田中角栄にあって今の政治家にないものとは
政治家は1人では何もできない
「政治の世界から派閥が消えるなんて、私はまったく信じていない。追い詰められたことで便宜上は派閥解消なんて言ってるけど、呼び方が変わるだけで実質的には何も変わらないはず。さすがに安倍派は瓦解するでしょうけどね。 大体、政治家は1人では何もできない人種と言っていい。権力闘争の場だと、どうしたって自分の勢力を大きくする必要がある。仮に岸田文雄首相がグループも何も関係なく、本当に自分1人で好き勝手に物事を決めたとします。そうしたら、たちどころにあらゆる角度から批判の声が上がり、政局は立ち行かなくなることが予想される。特に人事なんて、集団の論理抜きには何も動かせませんから」 そもそも自民党の裏金事件は派閥が存在するからではなく、政治とカネについての認識の問題というのが小林氏の見方。あまりにも庶民の金銭感覚とかけ離れたことを粗雑にやっているわけだから、世論が怒るのも当たり前というわけだ。 こうしたことは政治の世界だけでなく、日本の社会全体に似たようなことがいえるのかもしれない。「たとえば戦後のどさくさにまみれた混乱の中では、闇市で芋とか米とか売り買いしていたわけじゃないですか。みんな生きるために必死だから、違法だろうがスレスレだろうが仕方なかった面があって」と小林氏。そうした時代にあっては、政党も会社組織もいささかダーティな手を使うことは避けて通れないという暗黙の了解が存在したということか。 「だけど、そこから時代は確実に変わったわけであってね。旧来のやり方に対して『果たしてそれでいいのか?』という声が上がるようになった。昔は普通に許されてきたことも、当然、厳しく問われてくる。それなのに相も変わらず同じことをやっているものだから、とうとう国民の怒りが爆発したというのが今回の裏金問題です」 かねてから指摘されてきた岸田首相のリーダーシップ欠如に関しては、どう捉えるべきなのか? 小林氏は「実際は彼1人だけの問題ではない。世の中全体が平板化する中で、突出した人物が現れづらくなっているのは事実」としたうえで、「それでも少なくても保守層は強い自民党に戻ってほしいという気持ちでいる。要は不満を感じているわけです。もう少しビシッとした姿勢を見せろということです」と国民の声を代弁した。 記事後編では、さらに踏み込んで角栄の“人を動かす力”に言及する。 【後編】なぜ今の政治家はなぜ物足りないのか? 田中角栄の言葉が人を惹きつけた理由は下の関連記事からご覧ください。
小野田 衛