【ブライトン戦 現地レポート】ないものねだりをしている暇はない ブライトンは三笘薫らの留守を守れるか
◉クリーンシートより大事なもの
パスカル・グロスがトンネルの壁を力任せにたたく。フラストレーションを抱えたベテランが放った轟音は、ロッカールームの気まずい沈黙も手伝い、いつまでもそこに響いているようだった。 【インタビュー】 デ ゼルビ監督がウルブス戦後に厳しいチーム状況について語る「ウィンガーが誰もいない」 2024年ホームでの初陣は、ブライトンが思い描いた結果とはならなかった。攻撃では最終局面での精度を欠き続け、守備ではペドロ・ネトやマテウス・クーニャら推進力のあるアタッカーの対応に手を焼いた。引き分けという結果をより不本意に感じているのは、堅守速攻という明確な戦術がハマっていたウルブスのほうかもしれない。 これでブライトンはプレミアリーグ2戦連続のスコアレスドロー。数字だけを見れば課題の守備面が改善されているというポジティブな解釈もできる。しかし、超攻撃的なビルドアップ戦術を南海岸に持ち込んだイタリア人指揮官は、リスクを承知の上で"殴り勝つ"サッカーを信条としている。 「クリーンシートは私の気にするところではない。あなたたちジャーナリストが気にしていればいい」 試合後の会見でポジティブな反応を期待したであろう現地記者の質問は、ロベルト・デ ゼルビによって一蹴された。スコアレスドローという結果に対する冒頭のグロスの反応からも、チーム全体に彼のメンタリティが浸透していることが窺えた。
◉冬の寒さに拍車をかける大量の離脱者
「プレーしていない選手について話すのは好きじゃない」 ある日本人記者から不在の三笘薫についての質問が飛ぶと、デ ゼルビの表情は少し曇ったようにも見えた。発言は本心からのものだろうが、起用できない選手を多数抱える現状に最もフラストレーションを感じているのは、間違いなく監督本人だろう。 やはり不在選手の影響は大きい。アンス・ファティ、ソリー・マーチ、フリオ・エンシソらはいまだ実戦復帰には至らず、さらにシモン・アディングラや前述の三笘は負傷を抱えながらも大陸別大会に参加するためチームを離れた。 列挙すると、個で違いを生み出せる選手の離脱が目立つ。敵将ギャリー・オニールの口から自発的に三笘やマーチの名前が出たことも、彼らの存在の大きさを裏づける。とくにブライトンの志すサッカーにおいて最も質的優位が期待されるポジションの一つがウインガーであり、そこを主戦場とする選手の相次ぐ離脱は監督にとって大きな悩みの種だ。直近では38歳の鉄人ジェイムズ・ミルナーが急造で代役を務めているが、やはり個の打開力では本職の選手らに見劣りすることは否めない。 デ ゼルビは「ウインガーが誰もいない」と現状を嘆いた。ミックスゾーンで取材を受けていた複数人の選手から同様の話が出たことも、事態の深刻さを強調している。離脱者の留守をどう守るか、家主の手腕が問われる冬になっている。