遺骨収集、戦後80年でなお残る約112万柱 遺族高齢化で求められる収容の加速化
先の大戦の終結から今年で80年を迎えても、なお残る戦後の課題の一つが戦没者の遺骨の収容だ。中部太平洋や東南アジア、旧ソ連地域をはじめ海外で100万柱以上の遺骨が未収容のままとなっている。政府は令和11年度までを遺骨収集の集中実施期間と定めて取り組んでいるが、今年度は昨年12月末現在で71柱の収容にとどまっている。戦没者の遺族の高齢化が進む中、速やかな遺骨の収容と遺族への返還が求められている。 ■遺骨情報が減少 厚労省によると、海外での戦没者は約240万人。戦後の復員・引き揚げ時に送還された約93万2千柱と昭和27年以降の政府による遺骨収集事業で収容した約34万柱を合わせ、約128万柱が日本に戻ったが、約112万3千柱の遺骨が今も異郷の地に残されている。 このうち約30万柱は海没のため、約23万柱は現地の法制度や宗教上の事情などでそれぞれ収容が困難な状況にあり、収容可能な遺骨は最大で約59万柱とされる。 海外の旧戦域に放置された遺骨に関する情報は、かつては戦没者の戦友や遺族からもたらされるケースが多かった。だが、物故者の増加に伴い、遺骨情報は減少。政府は平成18年度から、民間団体に委託し、海外での聞き取りなど情報の収集を開始した。 28年には遺骨収集を「国の責務」と位置づけた戦没者遺骨収集推進法が議員立法で成立し、厚生労働省は一般社団法人、日本戦没者遺骨収集推進協会に遺骨収集業務を委託。政府と推進協会は同法が定める令和11年度までの遺骨収集の集中実施期間中に、これまで収集した情報で埋葬地と推定される約3300カ所について、遺骨の有無の確認調査を実施する計画だ。 ■一柱でも多く 調査で見つかった遺骨は、まず一部を検体として持ち帰り、DNA型鑑定で日本人と判定された場合、焼骨、追悼式を行った上で日本に送還している。 判定結果を踏まえて収容した遺骨は2年度に105柱、3年度75柱、4年度121柱、5年度141柱。今年度は12月末までの時点でマリアナ諸島などから計71柱を収容した。 政府は今年度、マーシャル諸島や東部ニューギニアなど14地域で28回現地調査を実施(6年12月末時点)。今年は、パラオ・ペリリュー島での昨年9月の調査で特定された1千人規模の集団埋葬地について収集体制を強化し、収容を加速させる方針だ。
厚労省の担当者は「ご遺族の高齢化も踏まえて一柱でも多くのご遺骨を早期に送還してまいりたい」と話している。