坂本花織はNHK杯で壷井達也の演技に「パワーもらった」 圧巻の演技でSP首位
【壷井達也の演技を力に変えて】 そしてもうひとつ、彼女は練習から試合までのプロセスで仲間の力も取り込める。個人スポーツのフィギュアスケートで、それは特筆すべき異能だ。 「今日は、一緒に練習してきたタッちゃん(壷井達也)がすごい演技(SP3位)をしたので、自分も精一杯やらなきゃって気持ちになりました。会場についた時は、日本人選手(で男子シングルSPは1、2、3位独占)が残っていたので、いろんな人にパワーをもらって。緊張していたはずが、会場入り後は集中になって切り替えられたと思います」 壷井が何度となく曲をかけ、4回転サルコウを降りられるようになった。それを本番で成功させたことで、坂本も激しく感情を揺さぶられたという。 「映像を見ながら泣きそうになったんですが、泣けへん!って。せっかくメイクしたあとだったので(笑)。でも抑えきれなくて、真下に涙を垂らして......」 周りと共鳴できる彼女のパワーは無尽蔵だ。 「昨シーズンまでは世界選手権3連覇が目標でした。今季は4連覇よりも、来シーズンの(2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ)オリンピックに向けたシーズンと捉えています。今シーズンの1試合1試合が来年に響いてくるので、今は2シーズンをつなげてひと括りにし、取り組んでいるところです。最終の目標はオリンピックだと思っているので」 11月9日、フリー。坂本はミュージカル『シカゴ』より『オール・ザット・ジャズ』を滑る。 「見ている方が乗れる曲だと思うので。みなさんに乗ってもらって、自分もそれに乗れるように」 坂本は最終滑走だ。
小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki