記録的な円安なのに「100円ショップ」が価格を維持できるワケ 「ダイソー」と「3COINS」に聞いてみた
■円安も円高も同じようにリスク(ダイソー) 次に、急激な円安にはどう対処していくかを聞くと、やはり好対照な回答が返ってきた。 ダイソーの後藤氏は「弊社にとっては過度の円安も円高も同じようにリスクで、それに立ち向かってきた歴史があります」と話す。 「100円や300円という価格の上限が決まっており、その中で何ができるかを考え抜いています。例えば、1つの商品でも生産国の見直しは常時行っています。国外生産が効果的なら海外生産の商品を輸入しますし、国内の生産工場のほうが低コストだと判断すれば国内で調達します。国内では店舗の無人レジ化を進めていますし、マレーシアでは大型物流拠点を整備しています。パッケージの簡素化、船便でコンテナの積載効率を最大に高める方法など、ありとあらゆることをやっています」 一方の3COINSは「極度の円安が弊社の生産コストを直撃しているのは事実です」としたうえで、こう話す。 「ただし、人件費や流通経費の世界的な高騰など、円安だけを原因にできない状況も生まれつつあります。さらに最近の社会情勢を考慮しますと、一部の商品については値上げを検討すべきタイミングかもしれない、と考えています」(肥後氏) ダイソーはすでに海外進出を果たしている。一方の3COINSは現在は国内展開だけだが、にもかかわらずアジアを中心に認知度が上がってきている。そのため海外での販路を期待されることも少なくないという。 「日本のライフスタイルは、世界的に見ても特に丁寧に組み立てられていると考えています。そこには生活を豊かにしてくれる生活雑貨が求められます。私たちは“ちょっと幸せな日常の提案”というコンセプトを通じてそのニーズに取り組んできました。そこで蓄積したノウハウを強みに、世界中で喜んでもらえる3COINSになれればうれしいですね」(肥後氏)
■目指す方向性の違い ダイソーの目標は2030年に自社だけで売り上げ1兆円、店舗数1万店だという。企業規模の大きさを最大限に発揮させる経営戦略と言えるだろう。 一方、3COINSの戦略は独自のブランド力を磨きに磨くこと。3COINSならではの切り口で開発されたプロダクトと強力な情報発信の掛け算で消費者の購買意欲を喚起させる戦略だ。 円安という向かい風に立ち向かっていることは変わらないが、それぞれに目指している方向には違いがあるのもまた面白い。 (井荻稔)
井荻稔