由来など不明の民具、収集やめる 三重・多気町郷土資料館 保管庫が満杯で
決まりなく今年度、初めて方針 今後は文書類を強化へ
三重県多気郡多気町相可の町郷土資料館(多気郡教育会館内)は、今年度初めて収集方針を決定し、由来や年代の不明な農具や家具、生活用品などは基本的に収集せず、文書資料を中心に収集して、文書館的な機能を強化することにした。同館の収蔵庫のスペースが限界に達しつつあるためで、同館の担当者は「どこに何があるのかも分からない死蔵状態。資料の整理を進めて展示に役立てたい」としている。
目録もなく全く未整理、苦渋の選択
限界に達しつつあるのは、同館裏手にある収蔵庫で、面積は約180平方メートル。資料の保存を目的に20年以上前に建てられたが、正式な築年数は不明。現在8割以上のスペースが埋まっているという。 資料収集活動の方針は郷土資料館事業の根幹だが、今回初めて明文化された。これまで「郷土に関係のあるものを収集する」という方針があったものの、具体的には決まっておらず、町民から寄贈されたものは全て受け入れていた。 その結果、文書資料の他に、唐箕(とうみ)や大八車、かかし、酒屋で使っていたとっくり、行李(こうり)などの農具や生活用品が集まり、収蔵庫のスペースを圧迫するようになった。また目録がなく、道具の由来や年代も分からないものが多いという。資料の整理は同館の村田麻美学芸員(50)と町教育課の村林純孝・社会教育指導員(66)の2人が業務の合間を縫って行っているが追い付かない状態が続く。 村田学芸員は「どうやって運び入れたのか分からない大きな民具もある。七輪などは子供たちに昔の暮らしの様子で見せることがあるが、ほとんどが死蔵状態。(方針決定は)既存の収蔵品を活用するための苦渋の選択だった」と話す。 収集方針は職員や資料館運営協議会で協議の上、決めた。それによると、収集対象について民具は▶使用人物や背景、墨書による来歴などが分かる物▶地域や時代の特色が分かる物──を基準に受け入れる。一方、重点を置くのは文書や写真、絵図、地図などの紙資料で、歴史や文化、民俗、考古学などの分野にわたり多気町の成り立ち、地域の特性を理解するために必要な資料を収集することを基本方針にする。 村田学芸員は「これからは民具類などを用途別に分けるなどして整理を進め、資料館としての役割を果たしていきたい」としている。