介護職員の不足深刻化、東南アジアで人材獲得を強化…現地での採用活動費に一部補助
厚生労働省は来年度、深刻な介護職員の不足を受け、東南アジアで介護人材の獲得を強化する。日本の介護事業者が現地で採用活動を行う経費の一部を補助し、インドネシアでは介護の教育プログラムの創設に着手する。高齢化の進展で介護が必要な高齢者が増えるため、外国人材の受け入れに戦略的に取り組む必要があると判断した。 【図解】介護人材はこうやって確保
出入国在留管理庁によると、介護の仕事に就くために、在留資格「特定技能」で入国した外国人は2万8400人(2023年末時点)で、政府目標の5割強にとどまる。先進国を中心に高齢化が進む中、国際的な福祉人材の獲得競争が起きていることが背景にある。
厚労省の獲得強化策の一つは、特別養護老人ホーム(特養)を運営する法人や介護福祉士を養成する専門学校などを対象にした渡航費の補助だ。ベトナムやミャンマーなど東南アジア各国の日本語学校や「送り出し機関」を訪問し、勉強や研修をしている若者らを対象に、日本の介護現場の魅力や待遇を伝える説明会を開いたり、面接などの採用活動を行ったりする費用に充てられる。
1法人あたりの補助額は国と都道府県から計100万円。厚労省は来年度、最大約100事業所の参加を見込む。今年度補正予算案に関連経費を盛り込んだ。
公益財団法人「介護労働安定センター」(東京)の23年度調査によると、特養など6割の介護事業所が職員の不足感を訴える一方、外国人材を受け入れたのは1割だ。厚労省は「外国人材の採用に一歩を踏み出す後押しをしたい」(福祉人材確保対策室)とする。
また、海外への人材送り出しに意欲的なインドネシアでは、来年度から3年をかけ、介護技術の教育プログラム「KAIGO」を策定する。厚労省と国際協力機構から、日本の介護保険制度や高齢者ケアの専門家ら計3人を派遣する準備を進めている。
KAIGOは、現地の公的な看護師養成校で学ぶ若者らが対象で、指導教員も養成する。ドイツなどは人材確保に向け、すでにインドネシアで動き出しているという。