壁に刻まれた「神様助けて」の文字 難民の収容施設を体験 ガザ・ウクライナ・アフリカ…「国境なき医師団」が展示会
■収容施設を再現した施設 壁に書かれた文字は…
体験できるブースは他にも。約70センチ四方の広さしかない黒い部屋が展示されています。この小さな部屋はリビアの収容施設で1人当たりが使用できる広さを再現しています。狭い収容施設に押し込まれたリビアの大勢の難民・移民らは食料や水を十分に与えられないまま座った体勢で寝るしかない日々を送っています。 収容施設を再現した部屋の壁には「神様助けて」という文字も。部屋の中に入った40代の女性は、「何日もここに居ると思うと発狂しそう…」と収容施設での生活を想像していました。
■発電機の手配や井戸掘り 医師団の「なんでもやるポジション」
国境なき医師団は医療支援を行う団体ですが、活動するのは医師や看護師だけではありません。その1人が「ロジスティシャン」の植田佳史さんです。 植田さんは「ロジスティシャンはなんでもやるポジション」だと話します。支援先で医療を提供する場所がない時は、今回展示されたような簡易テントや“仮設病院”を建築。電気を必要としていれば発電機を手配し、戦争などで水の設備が破壊され、生活用水が足りていない時には近くに井戸を掘ります。 植田さんは2022年と2023年にはウウライナで、今年7月からはガザ地区で支援活動を行いました。植田さんがガザ地区に入った際に目にしたのは完全に破壊し尽くされた市民の生活。中でも水の問題は深刻だと感じたそうです。イスラエル軍の攻撃により、下水道が破壊。町中で下水の臭いが広がっていたということです。 支援先で不足している生活用水は井戸を掘るなどしてまかなっていますが、町中の下水道パイプが破壊されていることで地下水が汚染され、感染症などのリスクが拡大している状況だといいます。
■「人々には関心を持ち続けてもらいたい」
植田さんは、展示を通して国境なき医師団の支援先で実際に何が起きているのかを知ってほしいと話します。 植田佳史さん(34) 「(ガザ地区では)1年ずっと続いていて、ウクライナだと2年以上戦争が続いている。どこかでこの流れを断ち切らなきゃいけないのは間違いないと思います」 「どこの紛争にしても絶対に風化させてはならないということ。人々には関心を持ち続けてもらいたいっていうのが現地で活動する人間としても思うところです」 国境なき医師団は今後、展示会だけではなく難民・移民の現状を学べるトークイベントなども予定しています。