中国で高まるスキー人気 キーワードは「人は北へ、雪は南へ」
【東方新報】2022年北京冬季五輪の会場地となった中国・河北省(Hebei)張家口市(Zhangjiakou)。11月下旬からスキーシーズンを迎え、多くのスキー場がにぎわっている。 あるスキー場はオープンから1週間で利用客が2万人を超え、過去最高を記録。週末にはスキー場近くのホテルの約1200室が満室となった。スキー場オーナーの雛中橋(Zou Zhongqiao)さんは「出だしの勢いから考えて、この冬の来場者は60万人を超えるでしょう」と喜びの声をあげる。 中国東北部の吉林省(Jilin)長春市(Changchun)のスキー場責任者、鄧海濤(Deng Haitao)さんも「スキーチケットが3日間で1万5000枚も売れました」と驚きの表情を浮かべる。 2015年に北京冬季五輪の開催が決定して以降、中国のスキー人気は高まっており、業界では「冷たい自然がホットな産業になった」と言われている。最近は「人は北へ、雪は南へ」という言葉をよく聞くようになった。 「人は北へ」とは、全く雪が降らない中国の中部・南部の人たちが北方でスキーを楽しむ傾向を指している。 新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)のアルタイ山脈(Altai Mountains)奥深くの景勝地、禾木村(Hemu)にあるスキーリゾートのレストランでは、エビの蒸しギョーザ、もち米の春巻き、肉のローストなど本格的な広東料理を取りそろえている。自治区から約4000キロも離れた広東省(Guangdong)から訪れる客が最も多いためだという。レストラン責任者の戴湘君(Dai Xiangjun)さんは「香港の点心料理を作るコックを高額の報酬で雇い、食材も広東省から空輸しています」と説明する。 一方の「雪は南へ」とは、雪の降らない中部・南部に屋内スキー場が増えていることを指す。 南部の湖南省(Hunan)長沙市(Changsha)では、世界で5番目に大きいという広さ8000平方メートルの屋内スキー場がある。年中利用が可能で、人工雪で初めてスキーを体験する人が多く、青少年向けの普及講座も行われている。 中国の国土の多くは雪が降らず、国民の大半はスキーをする習慣が少なかった。大雪の降る中国東北部でも、日本の降雪地帯のように学校でスキーの授業をすることは少ない。スキーはウエアや用具に費用がかかり、一部の富裕層が楽しむものだった。 しかし北京冬季五輪開催を通じてスキー熱が高まり、各地にスキー場が整備され、都市部から日帰りできる場所も増えた。市民の消費力も向上し、スキー道具をレンタルするより、ネットでウエアや用具を一括購入する人も多くなった。 中国のスキー場の多くは人工降雪機に頼っており、硬い雪質だと言われている。スキー愛好家の中では、「パウダースノー」と言われる日本のスキー場への関心も高い。日本のスキー人口は長野冬季五輪が開催された1998年の1800万人から、2020年には4分の1以下の430万人に激減。スキー場の閉鎖が相次いでいる。中国のスキー人口が増え続ける中、来日してスキーを楽しむ人が増えれば、ウインウインの関係になりそうだ。(c)東方新報/AFPBB News ※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。