ブルペンで泣いた中央学院・蔵並 センバツ初登板前に得た新境地
◇センバツ高校野球準々決勝(28日、甲子園) ◇○中央学院(千葉)5―2青森山田● 【熱戦を写真で】青森山田-中央学院(準々決勝) ◇蔵並龍之介投手 中央学院・3年 毎回走者を背負ったが、最少失点にとどめた。八回途中1失点。「粘り強さが中央学院の野球。それを消さないように意識した」。今大会初登板で先発を任された背番号「1」は穏やかにほほ笑んだ。 宇治山田商(三重)との2回戦を控えたある日。練習会場のブルペンで泣いていた。「悔しくて。思うような球が投げられない」。187センチの長身から投げ下ろす得意のフォークボールが指に引っかかり、コントロールができない。仲間の奮闘でチームは勝ち上がったが、登板機会はなかった。マイペースな性格だが、責任感は人一倍強い。昨秋は主戦格だっただけに、うれしさも悔しさもあった。 相馬幸樹監督の提案を受け、フォークの新たなイメージを試行錯誤した。たどり着いたのは「ボールを落とそうとするのではなく、落ちてくれたらいいなぐらい」の気持ち。捕手のミットに球が届くように右腕を振ると、納得できる球が増えた。 準々決勝のマウンドに自信を持って上がった。8安打5四球と苦しんだが、要所で決まる落差の大きなフォークが効果的だった。相馬監督は「こういうリズムの投手は疲れると思いながら見ていた」と笑いつつ、「それが強打の相手を抑える要因になったかな」とたたえた。相馬監督が上位進出するうえで「ターニングポイント」とみていた試合で、見事に期待に応えた。 好きな言葉は「念ずれば花開く」。耐えに耐えて、春の甲子園に笑顔の花が咲いた。【石川裕士】