安田記念は強力・香港馬参戦で混戦ムードに拍車 一発あるなら実績馬と未対戦の「上がり馬」
――その日本馬たちの力関係はどう見ていますか。 大西 今年は3歳馬の参戦がないため、力関係はある程度、明確になっていると思います。昨年の安田記念やGIマイルCS(京都・芝1600m)で上位にきている、セリフォス(牡5歳)やソウルラッシュ(牡6歳)、ナミュール(牝5歳)、ガイアフォース(牡5歳)らは、現在のマイル路線においては上位の存在です。 ただ、これらは実力が拮抗しているため、馬場状態や展開ひとつで着順がコロコロ変わります。調教の動きや枠順などを踏まえて、レース直前までこれらの取捨には頭を悩ませそうです。 ――では、こうした実績馬や強力な香港馬を脅かしそうな存在、大西さんが気になっている伏兵馬がいたら教えてください。 大西 ここまでに名前を挙げた馬たちと一度も対戦がない"上がり馬"、パラレルヴィジョン(牡5歳)が気になりますね。 もともと名門・国枝栄厩舎で高い評価を受けていた好素材で、3歳秋には「菊花賞の秘密兵器」と言われていたようです。実際、デビュー3戦目でGII神戸新聞杯(7着。中京・芝2200m)に挑んだほどで、厩舎の期待もそれだけ大きかったのでしょう。 そんな期待馬が3勝クラスで足踏み。オープン入りを決めたのが、ダート戦だったのは予想外でしたね。それでも、今年に入ってからは芝のマイル戦を使われて2連勝と軌道に乗ってきました。 ダートも含めて1600m戦では3戦全勝。この距離に適性が高いのは間違いありません。さらにここに来て、行きっぷりよく好位が取れるようになってきました。そこは、成長の証。まさに今、本格化を迎えているのではないでしょうか。 国枝厩舎は今回、フィアスプライド(牝6歳)との2頭出しになりますが、クリストフ・ルメール騎手は自身が騎乗してヴィクトリアマイルで2着となった同馬を手放して、パラレルヴィジョンを選択。この馬の未知なるポテンシャルを、それだけ高く買っている証拠でしょう。 ということで、安田記念の「ヒモ穴馬」にはパラレルヴィジョンを指名したいと思います。
武藤大作●取材・構成 text by Mutoh Daisaku