「とても住めない…」『銀河鉄道999』それぞれの星に登場する「風変わりな文化や風習」
■果てしなく続く葬式の文化「霧の埋葬惑星」
コミックス5巻「霧の葬送惑星」で、ろうそくと線香の匂いが漂う薄暗い「葬送惑星」に到着した999号。 そこで鉄郎とメーテルは黒装束に身を包んだ住民たちに襲われ、生きたまま棺桶に閉じ込められてしまう。気を失ったところを誰かに救出されたのか、辛くもその場を脱出できた2人。 実はこの星の住人たちは“お葬式の悲しいムード”が好きなゆえ、葬式を楽しむために人を次々に殺し、はてしなくお葬式を続けているという。 その後2人は再度襲ってきた住人たちに対し、弱装エネルギー銃を使って気絶させる。すると町のあちこちで鐘が鳴りはじめ、その倒れた住人たちに多くの人が群がってきた。なんと彼らは気絶した住人たちを生き埋めし、“楽しみの悲しい涙”を流すのだという。 死んでいようが気絶していようが、倒れている人であれば誰彼構わず葬式をあげる文化というのは恐ろしい。悲しい雰囲気を楽しむことが習慣になっているなんて、地球人にとってはかなり悪趣味に感じるだろう。 お葬式の在り方は、現在の地球でも時代を問わず議論されている。それでもメーテルがいう「私が死んでも、お葬式はいらないわ。ただ…いつまでも覚えていて時々思いだしてくれれば それが一番うれしい…」というセリフには、共感してしまう。
■殴り合うことが挨拶…!?「怒髪星」
コミックス5巻「怒髪星」で、真っ赤に燃えているような「怒髪帝国」という星に降りた鉄郎とメーテル。 鉄郎が通りを歩いていると、突然通行人に絡まれて殴られてしまう。その後も飲食店に入ったところ喧嘩に巻き込まれて殴られたり、マントを奪われたりする。この星は喧嘩すること自体が文化であり、挨拶代わりのようなものなのだ。 しかし、喧嘩が終わった住民たちは肩を組み合い「来週またやろう」と仲直りしている。またメーテルの服を奪うため襲い掛かってきた女性も、メーテルの強さを知ると「私の負けよ、これは返すわ。相手が悪かったみたい」と、素直に反省するのであった。 999号で星を発つ際に「なんだか底抜けに明るいねえ、悩みなんかないみたいだ」「陰にこもってウジウジしなくてもいい星だろうね、怒りたい時怒れる 自由の星……」と、鉄郎は見方を変えている。 殴り合う文化は到底容認できないが、相手に言いたいことを言って自由にふるまえるのは少々羨ましい。とくに日本人は喜怒哀楽を表現するのが苦手で、うちにこもる傾向があると言われている。しかも近年ではSNSの発展により、生じたフラストレーションを匿名でぶつけるといった新たな問題も生じている。 それならばこの「怒髪星」のように、ときには相手に思い切り意見をぶつけ豪快に喧嘩をするのも良いかもしれない? 選挙でリンチする人間を選んだり、毎日のようにお葬式をしたり。『銀河鉄道999』に登場する星にはとんでもない文化や風習がある。 ただ、その裏には、深い教訓やメッセージが込められているように思えてならない。『銀河鉄道999』の旅で描かれる多様な星の文化は、我々が持つ常識に新たな視点を与えてくれるのだ。
でかいペンギン