【医師解説】耳鳴りがする…耳鼻科と心療内科のどちらを受診すべき?
耳鼻科では耳鳴りはどのような治療をする?薬・補聴器・TRT療法などを医師に質問
編集部: 耳鳴りはどのようにして治療するのですか? 丹羽先生: 聴力検査や、必要に応じて頭部MRIなどの検査を行って原因を確認します。原因がわかったらそれに対する治療を行います。 内耳障害による難聴を伴っている場合には、ビタミンB12、血流改善薬、副腎皮質ホルモン剤などを処方します。また、ステロイドを耳の中に注入する薬物療法もあります。 編集部: 補聴器なども使うのですか? 丹羽先生: 補聴器を使う治療法にTRT療法(Tinnitus Retraining Therapy:耳鳴再訓練療法)というものがあります。 これは、補聴器やサウンドジェネレーターという装置を使った治療で、耳鳴りとは違うタイプのノイズ音を聞くことで、耳鳴りを気にしないようにさせる、というものです。耳鳴りの順応療法ともいわれます。 編集部: TRT療法はどのようなときに行われるのですか? 丹羽先生: 薬物を使った治療では改善できない場合などに用いられます。ただし、機械を購入しなければならず、治療期間も長期に及ぶことがあるので、その点、了承いただくことが必要です。 編集部: 耳鳴りは治るのですか? 丹羽先生: 中耳炎など、原因が明らかになっている場合には耳鳴りを治すことができます。しかし内耳より中枢側に異常がある場合は治療が難しく、完治しにくいとされています。しかし、TRT療法などを根気よく行うことで、耳鳴りを気にしないようにすることは可能です。 そして最も重要なことは、自分の耳鳴りの原因・発生メカニズムをきちんと医師から説明してもらい、注意が必要な耳鳴りなのか、気にしなくてもよい耳鳴りなのかを納得することです。 耳鳴りが消えることを治療目標にするのではなく、気にならないようになることを治療目標としましょう。 編集部: 耳鳴りは放置してはいけないのですね。 丹羽先生: 耳鳴りを放置することでうつ病を発症するリスクもあります。ほとんどの耳鳴りは難聴に伴って起こりますが、特に高齢者で耳鳴りと難聴の両方がある場合は、うつ病になるリスクが高いとされています。 編集部: なぜですか? 丹羽先生: 女性は普段からいろいろな人とのコミュニケーションを積極的に取る傾向にありますが、男性は耳鳴りや難聴があると人とコミュニケーションを取るのが億劫になることが多いので、うつ病のリスクが高くなってしまうのです。 そのため耳鳴りを感じたら、その原因を調べることが必要です。 編集部: 最後に、読者へのメッセージをお願いします。 丹羽先生: 高齢者の場合、高い周波数の音が脳に届いていないことが多く、そうすると脳はなんとか音を聞き取ろうとして感度を上げます。結果的に、それが耳鳴りの原因になっていることが多いです。 いってみれば、耳鳴りは脳が頑張っている証拠であり、この場合は補聴器をつけるなどして、音を補充してあげると脳が安らぎ、耳鳴りが改善されることが少なくありません。 難聴と耳鳴りの両方で悩んでいる場合にはこうした解決策もありますので、ぜひ、医師に相談してみてください。