「テトリス フォーエバー」プレイレポート。今年40周年の「テトリス」シリーズの魅力を再確認できる1本。多数の過去作にくわえて完全新作も収録
1985年、ソビエト連邦(当時)の科学者だったアレクセイ・パジトノフ氏の手によって生み出された「テトリス」は、わかりやすいルールとそのヤミツキ感から全世界で大ブレイクを巻き起こしたゲームだ。画面上から落ちてくるテトリミノを左右移動と回転で操作し、奇麗に横一列に並べれば消えるというシンプルなルールながら、その高い中毒性に世界中の多くの人が虜になったのは誰もが知るところだ。そして本作が、いわゆる“落ちモノパズル”と呼ばれるジャンルを定着・普及させたことに異を唱える人は、もはやいないだろう。 【画像】ファミリーコンピュータやスーパーファミコンで遊んだ、懐かしの「テトリス」関連タイトルが大量に収録されている。 元のルールが簡素なだけに応用の範囲も広く、「テトリス」誕生以来アレンジしたゲームが数多く登場している。その数は細かくカウントしていけば100を越えるバリエーションとなり、もはやすべてを網羅するのは難しいほど。そんな中から、マルチ対戦が可能でカルト的な人気を持つ「テトリス武闘外伝」や、大爆発でラインを消すことが可能な「スーパーボンブリス」といった、特に象徴的な16+1種類のタイトルを収録し、さらに完全新作となる「テトリス タイムワープ」もプレイできるのが、11月13日に発売されるプレイステーション 5/プレイステーション 4/Xbox Series X|S/Xbox One/Nintendo Switch/PC用「テトリス(R) フォーエバー」だ(Switch版のみ11月14日発売)。 今回は、PS4版「テトリス フォーエバー」を発売前に体験できたので、そのプレイレポートをお届けする。 ■ 収録されている17作品を、1タイトルずつチェック 本作で遊べるタイトルのうち、「テトリス タイムワープ」を除く17作品は以下の通りとなっている。中でもエレクトロニカ60版の「テトリス」は、コンピュータ本体やプログラムを入手することがほぼ不可能なことを考えると、当時を再現しての収録とはいえ非常に貴重なタイトルといえるだろう。 ・テトリス (Electronika 60版/1984年6月6日リリース) ・テトリス(アカデミーソフト) (MS-DOS版/1986年リリース) ・囲碁 九路盤対局 (ファミリーコンピュータ版/1987年4月14日リリース) ・テトリス(スペクトラム・ホロバイト) (MS-DOS版/1988年1月29日リリース) ・テトリス (Apple II版/1988年7月リリース) ・テトリス (ファミリーコンピュータ版/1988年12月22日リリース) ・ハットリス (ファミリーコンピュータ版/1990年7月6日リリース) ・ハットリス (ゲームボーイ版/1991年7月19日発売) ・テトリス2+ボンブリス (ファミリーコンピュータ版/1991年12月13日リリース) ・ハットリス (NES版/1992年4月リリース) ・スーパーテトリス2+ボンブリス (スーパーファミコン版/1992年12月18日リリース) ・テトリス武闘外伝 (スーパーファミコン版/1993年12月24日リリース) ・スーパーテトリス2+ボンブリス 限定版 (スーパーファミコン版/1994年1月21日リリース) ・スーパーテトリス3 (スーパーファミコン版/1994年12月16日リリース) ・スーパーボンブリス (ゲームボーイ版/1995年3月17日リリース) ・スーパーボンブリス (スーパーファミコン版/1995年3月17日リリース) ・スーパーボンブリスDX (ゲームボーイカラー版/1999年12月10日リリース) なお、全タイトルとも操作方法の変更が可能なので、他と比べてボタン配置が違っていたファミリーコンピュータ版も、慣れたキーに設定してプレイすることができる。また、マニュアルが付属していたタイトルは、それを高解像度で見られるのも嬉しい仕様だ。 ちなみにこういった作品の場合、現在のマシンパワーに合わせて当時は重かった処理が軽くなっていることが時々あるのだが、本作ではそのような場面はプレイした限り見当たらなかった(PS4版)。これに関しては色々な意見があるかもしれないが、筆者的には“処理落ちも当時そのまま”であってほしいと思っているので、本作の仕様には大いに満足している。 それでは、各タイトルをみていこう。 □テトリス (Electronika 60版/1984年6月6日リリース) 「テトリス」が最初に動いたのは、ソビエト連邦で流通していたコンピュータ、エレクトロニカ60。このマシンはグラフィック機能を持っていなかったため、いわゆるテキスト文字でゲーム画面が構成されていた。ラインを消しても得点は入らず、ブロックを落下させた高さによってのみスコアが増加していく。収録されているのは、1984年の緑と白、1985年の緑と白の4バージョンとなる。画面はロシア語または英語表記から切り替えることが可能で、ロシア語でプレイすれば当時の雰囲気を味わうことができるのだ。 □テトリス(アカデミーソフト) (MS-DOS版/1986年リリース) オリジナル版を、「テトリス」を生み出した開発者のひとりであるヴァディム・ゲラシモフがIBM PC用のMS-DOS版に移植したバージョン。新たにカラーグラフィック表示となり、フロッピーディスクにコピーされて世界中に広まることとなる。いわゆるフリーウェアのような形態で流通したが、店頭販売は行われていない。 □囲碁 九路盤対局 (ファミリーコンピュータ版/1987年4月14日リリース) 「テトリス」に類するゲームではないが、家庭用ゲーム機における「テトリス」の物語が本作から始まった(BPSのファミリーコンピュータ参入タイトル第1弾)ということで収録されている。BPSは、日本初期RPGの代名詞「ザ・ブラックオニキス」をリリースしたソフトハウスで、手がけたのはヘンク・ブラウアー・ロジャース。彼は後に、ザ・テトリス・カンパニーも設立することになる。ヘンクはファミコン用ソフトを制作するために、当時任天堂の社長だった山内溥氏と碁を打ち、許諾を得たと言われている。 □テトリス(スペクトラム・ホロバイト) (MS-DOS版/1988年1月29日リリース) スペクトラム・ホロバイト社が制作し、アメリカで最初に発売された「テトリス」。ラインを消しても得点が入らないのは、エレクトロニカ60用のオリジナル版と同じ。ラインを消去するごとに、ブロックの落下速度も上がっていく。ゲーム画面の背景には、当時のソ連っぽいイメージCGが描かれていた。 □テトリス (Apple II版/1988年7月リリース) 1977年に、アップルから発売されたコンピュータ・Apple II向けの「テトリス」。基本的にはIBM PC用MS-DOS版と変わらないが、出現するブロックの色が毎回異なるため、カラーリングで判別できないのが難しい。 □テトリス (ファミリーコンピュータ版/1988年12月22日リリース) 家庭用ゲーム機で、初めて発売された「テトリス」。国内では、国産パソコン版に次いでの登場となっており、25ラインを消すとステージクリアとなるステージ制が導入されていた。操作方法もパソコン版と同一で、十字キーの下で回転、Aボタンで落下となっている。楽曲も3曲から選べるのも共通だ。 □ハットリス (ファミリーコンピュータ版/1990年7月6日リリース) 「テトリス」が大ブレイクしたことで一躍有名になったパジトノフ氏が、次に何を創るのか? ということで注目されていた中で登場したタイトルの、ファミリーコンピュータ版。パジトノフ氏に加えて、ウラジミール・ポルヒコ氏がゲームデザインを行なっている。マニュアルには、その2人のスナップ写真が掲載されていた。家庭用として最初に発売された「ハットリス」で、アメリカでリリースされたのはその2年後となる。 □ハットリス (ゲームボーイ版/1991年7月19日発売) ゲームボーイ版「テトリス」が大成功を収めたことで移植されたバージョンで、1991年に日本とアメリカで発売されている。白黒液晶でも帽子のデザインは見やすく、快適なプレイが可能だ。 □テトリス2+ボンブリス (ファミリーコンピュータ版/1991年12月13日リリース) オリジナルの「テトリス」をより洗練したバージョンにくわえ、爆弾ブロックを使ってラインを消す「ボンブリス」が初登場した作品。「ボンブリス」は、落ちてくるピースに最低1つの爆弾ブロックが含まれており、これを絡めてラインを揃えることでフィールド内のブロックを消すことができる仕組み。 □ハットリス (NES版/1992年4月リリース) アメリカで、NES向けに発売されていた最後の「ハットリス」。日本のファミリーコンピュータ向け「ハットリス」とは、帽子のデザインが異なっているのが特徴。 □スーパーテトリス2+ボンブリス (スーパーファミコン版/1992年12月18日リリース) ファミリーコンピュータ版をグレードアップさせたバージョンで、スーパーファミコンで発売された。基本的な内容は変わらないが、「ボンブリス」に対戦モードが搭載されたのが特徴。 □テトリス武闘外伝 (スーパーファミコン版/1993年12月24日リリース) 本作は、日本でのみ発売されている対戦に特化した「テトリス」。従来のような1人用のフィールドでプレイするモードは収録しておらず、1人ならコンピュータと、2人なら互いがそれぞれ対戦相手となる。ラインを消した数だけ相手のフィールドにブロックが送られ、フィールドが先にブロックで積み上がってしまうと負け。登場キャラクターはそれぞれの必殺技を持ち、それを使うことで戦いを有利に運ぶことが可能だ。 □スーパーテトリス2+ボンブリス 限定版 (スーパーファミコン版/1994年1月21日リリース) 日本で限られた数のみ販売された、「スーパーテトリス2+ボンブリス」の限定版。ゲーム内容はオリジナル版と同じだが、「ボンブリス」のPuzzleモードはすべてが刷新された150問を収録している。 □スーパーテトリス3 (スーパーファミコン版/1994年12月16日リリース) 日本でのみ発売された、スーパーファミコン用「テトリス」の決定版。テトリスクラシック、マジカリス、スパークリス、ファミリスという4種類のモードを実装していた。特にファミリスは、「テトリス」シリーズ初となる4人同時プレイを楽しむことができる。 □スーパーボンブリス (ゲームボーイ版/1995年3月17日リリース) これまでは「テトリス」と合わせて収録され発売されてきた「ボンブリス」を、単体のタイトルとしてゲームボーイでリリースしたバージョン。海外では、「Tetris Blast」という名前で登場している。なお、タイトル画面に“2PLAYERS”の表示はあるが、選択はできない。 □スーパーボンブリス (スーパーファミコン版/1995年3月17日リリース) 日本のスーパーファミコンのみで発売された、16ビット版「ボンブリス」。上記のゲームボーイ版と違い、2人対戦が可能となっている。収録されているモードはContestとPuzzleのほか、「テトリス」に付随しない「ボンブリス」単体としては初となるVS Comを搭載したタイトル。 □スーパーボンブリスDX (ゲームボーイカラー版/1999年12月10日リリース) ゲームボーイカラー用に発売されたアップグレード版の「スーパーボンブリス」で、「ボンブリス」シリーズでは最も多い5つのモードを収録している。ただし、こちらも上記のゲームボーイ版「スーパーボンブリス」と同じく“2PLAYERS”は選択不可。 プレイ可能な17作品をザックリと見てきたが、初期パソコン版を除けば「BPSから発売されたファミリーコンピュータ版&スーパーファミコン版「テトリス」シリーズ総集編」と表現しても良いかもしれない。国産パソコンで発売された「テトリス」が入っていないのが、個人的には残念な部分ではあるが……。とはいえ、これまでこうした作品は発売されてこなかったので、これだけのタイトルが1本にまとまっているというのは嬉しいかぎり。これでまた、古いハードを引っ張り出す理由が一つ減ったことだろう。 ■ 完全新作の「テトリス タイムワープ」は、過去の「テトリス」シリーズ3作品と最新作を1つに凝縮した内容に 「テトリス フォーエバー」に完全新作として登場した「テトリス タイムワープ」は、収録されている各作品の世界へとワープして、スコアを稼ぐシステムが採用されている。そのカギを握るのは、新たなテトリミノである“タイムワープ・テトリミノ”だ。 10ライン消すごとに出現する、このピースを含む形でラインを消すとタイムワープが発動し、別の時代へと送り込まれる。そこで提示されたチャレンジを制限時間20秒以内に成功すれば次の時代へと移行、さらなるチャレンジに挑戦することができる仕組みだ。これを繰り返すことで、最終的には2024年に戻ってくることができるようになっている。 タイムワープのチャレンジ中は、ラインを消すほどにスコアにブーストがかかり、その状態でチャレンジを成功させれば大きなボーナス得点が獲得可能だ。しかし、失敗した場合はボーナススコアは得られないままに現代へと戻されてしまうという悲しい結末が。 また、タイムワープ・テトリミノを金色の状態で設置させ、それを含む形でラインを消すことができれば、タイムワープの代わりに静止ブロックのスライド落下が発生! これによりブロックの隙間が埋められることになるため、4列どころかそれ以上の“超消し”が発生するのだ。ピンチをチャンスに変えることができる、一発逆転のシステムといえるだろう。 収録されているモードは、メインとなる“タイムワープ スコアアタック”の他に、できるだけ早く150ラインの消去を目指す“モダンマラソン(タイムワープ・テトリミノ非出現)”、“3分タイムアタック”、1989年の「テトリス」をテーマにしたフィールドで150ラインの早い消去を目指す“1989マラソン(タイムワープ・テトリミノ非出現)”、そして2~4人でプレイする“マルチプレイヤー対戦”の4つ。タイムワープ・テトリミノが出現するモードでは、ワープ中はカウントダウンが止まっているので、積極的にワープするのが高得点への道だ。 なお、マルチプレイヤーモードでは、タイムワープ・テトリミノにレインボー状態が追加される。この状態で設置させてからラインを消すと、対戦相手全員をランダムな時代にワープさせることが可能だ。 調べられた限りでは、タイムワープする先は1984年、1989年、1993年の3パターン。1984年ならエレクトロニカ60版「テトリス」、1989年はゲームボーイ版「テトリス」、1993年はファミリーコンピュータ版「ボンブリス」へと切り替わる。タイムワープ・テトリミノは設置した瞬間にワープする時代が決まるので、腕に自信があるなら1984年を狙うのがスコア獲得のコツだ。 収録作品数のわりにはワープ先が3種類というのは少なく感じるかもしれないが、「テトリス」プレイ中に「ハットリス」に切り替わってもらっても困るので、このくらいがちょうど良いのかもしれない。 ■ 見入ってしまうこと間違いなし。誕生から著作権を巡るゴタゴタ、そして未来の「テトリス」を知れる映像や資料 本作のもうひとつの醍醐味が、起動した直後に表示される「PLAY TETRIS!」と書かれたモード。ここでは、非常に貴重な画像やアレクセイ・パジトノフ氏などへのインタビュー映像と共に、「テトリス」シリーズがどのようにして全世界へと普及したのかを、5つに分けられたパートで知ることができる。 筆者は1988年にゲームセンターで出会った「テトリス」から虜になったのだが、そのソビエト連邦で生まれた同作がどのように普及して日本でブームを巻き起こしたのか、気にはなっていたもののそれを詳しく知るには至らなかった。その経緯が事細かに記録されているのを見て、正直なところゲーム本編よりも興奮してしまったほどだ。 各チャプターには進行度が表示されていて、画像や映像を見るなどして読み進めていくと、進行度がアップしていく仕組みになっている。途中では、その時代の「テトリス」シリーズなどをプレイすることもできるのだが、もちろん遊ばなくても先に進むことは可能。ボタンを押せば、いつでも収録されている作品を選択できる画面に切り替わるし、このモードをすべて100%にしなくても全タイトルをプレイできるので、問題はないだろう。 ■ 多種類の「テトリス」シリーズをプレイできる面白さに加えて、永久保存版の資料としても重宝 収録されている全作品と最新作、そして「PLAY TETRIS!」と一通りをプレイしてみたが、似通った内容のソフトが多いので、ある程度プレイヤーを選ぶのではないかと感じられた。とはいえ、「ボンブリス」などはタイトルごとにパズルモードの問題が違っているので、全作品全問題を遊べることを考えれば非常にお買い得といえるだろう。当時クリアしたという人も、もう一度トライすると新発見があるかもしれない。 「ハットリス」のように登場時はあまり人気が出なかった作品も、今ならば攻略方法も検索すれば簡単に見つかるので、新たな楽しみ方を模索できるのではないだろうか。実際、筆者もアーケード版をプレイして以来の体験だったが、確実に当時よりも上手に、そして面白くプレイできた。 最新作の「テトリス タイムワープ」は、過去に発売された「テトリス」シリーズ作と連携させるというアイデアや、4ライン以上のライン消去を味わえるブロックの存在感が盛り上がる要素となっている。特に、フィールドが埋まってきて大ピンチの時に金色のブロックを消して一気に綺麗になっていく様を体験すると、ヤミツキになるのは確実。4人までの対戦が可能なのも嬉しいが、筆者のように一人暮らしの場合は用なしかもしれない(笑)。 その他にも、資料的価値が非常に高いインタビュー映像や当時の画像などが見られるのも、高ポイントなのは間違いない。正直なところ、今の時代にヘンクの口から「ザ・ブラックオニキス」の話が聞けるとは思わなかったので、非常に驚かされた。 「テトリス」シリーズが好きな人だけでなく、「テトリス」の歴史に興味があるユーザーにもオススメしたい1本だ。 □PS5/PS4版「テトリス フォーエバー」のストアページ □Xbox版「テトリス フォーエバー」のストアページ □Switch版「テトリス フォーエバー」のストアページ □Steam版「テトリス フォーエバー」のストアページ □GOG.com版「テトリス フォーエバー」のストアページ TETRIS (R) & (C) 1985-2024 Tetris Holding. 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