【大学野球】背番号「44」に愛着を持つ東大パワーヒッター・中山太陽がリーグ戦初本塁打
スイングを修正して一発
【10月5日】東京六大学リーグ戦第4週 慶大5-3東大(慶大1勝) 2022年春。中山太陽(3年・宇都宮高)は1年の浪人生活の末、赤門突破を果たした。東大合格の情報を聞きつけた高校の先輩・阿久津怜生(当時4年)から連絡が入った。当然のように、野球部への勧誘である。しかし、中山は首を縦に振ることができなかった。 【選手データ】阿久津怜生 プロフィール・寸評 「ぜんそくを抱えており、今も薬を服用しています。あのときは、体の不安があり、果たして、練習についていけるか……。一歩、踏み出すことができませんでした」 阿久津はアメリカンフットボール部から2年8月から野球部に転部という、異色のキャリアを歩んできた。俊足を武器に、打撃も力強さがあり、東大のレギュラーで活躍。4年時はプロ志望届を提出した。指名はなかったが、果敢に挑戦する姿に、中山は感銘を受けた。 阿久津が学生ラストシーズンを終えた22年秋のリーグ戦後(10月末)、中山は野球部の門をたたいた。左のパワーヒッターは2年春から出場し、3年春からは外野の一角を手に。打率.269と存在感を示すも、法大1回戦でスイングした際に右肩を痛め、シーズン終盤3試合を欠場した。今秋に復帰したものの、2カードを終えて13打数2安打と長打も出ていなかった。
空き週でスイングを修正。対左投手にボールを迎え気味だったのを、踏み込む本来の打撃を取り戻した。迎えた慶大1回戦で、その成果が出た。1回表無死一、二塁。慶大の先発左腕・渡辺和大(2年・高松商高)のストレートをライトスタンドへ運んだ。先制3ランは、うれしいリーグ戦初本塁打である。 「(肩は)まだ万全ではありませんが、1試合、1試合出し切る思いでプレーしている」 チームは逆転負けを喫し、開幕5連敗と苦戦が続く。「まだリーグ戦は続く。大事な場面で一本を出していきたい」。前を向いた。
2年時は背番号35
2年時は背番号35を着けたが、上級生となった今春からは自ら希望して44を着けた。 「柳田さん(柳田悠岐、ソフトバンク)、佐野さん(佐野恵太、DeNA)がかつて着けられ、『左の未完の大器』から飛躍されたイメージがあるので選ばせていただきました」 チーム内の同級生の存在も刺激になっている。昨秋は酒井捷(3年・仙台二高)、今春は大原海輝(3年・浦和高)が外野手部門のベストナインを受賞した。左翼手の中山に、火がついた。「自分も続きたい。ただ、まずは目の前の試合でチームに貢献する」。 柳田と佐野は一軍での活躍を経て、1ケタ背番号に昇格したが、中山は「44に愛着があるので……」と語った。東大では希少価値の高い左の強打者。188センチ87キロの中山がついに、覚醒の予感がする。 文=岡本朋祐
週刊ベースボール