《ブラジル》体操界の若き英雄レベッカ=最多メダリストへの苦難の道のり
体操界の光り輝く金字塔レベッカ・アンドラーデ(25歳)が、ブラジルスポーツ界に新たな歴史を刻んだ。8月5日、パリ五輪の女子個人床運動で金を獲得し、今大会でのメダル数を4個に増やした。これで東京五輪の2個と合わせて合計6個となり、最も多くのオリンピックメダルを獲得したブラジル人アスリートとなり、その名は不動のものとなった。 しかし、彼女のキャリアは決して平坦ではなく、幼少期から数々の困難を乗り越えてきており、それが今回の成功に結実した。若い彼女の長い道のりを5日付G1などが報じた。 レベッカはサンパウロ州グアルーリョス市で、8人兄弟の5番目として生まれた。幼い頃に父親が家を出てから、母ローザさんが家事労働者として女手一つで必死に家族を支えた。 レベッカは叔母に連れられて訪れたジムで体操の魅力を知り、4歳の頃に同市の社会プロジェクトの奨学金を受けて体操を始めた。だが、バスに乗る金銭的余裕がなく、片道2時間かけて徒歩で練習に通った。ローザさんは娘の才能を信じ、その成長を献身的にサポートした。 体操の道を選んだレベッカは10歳の時に単身パラナ州クリチバ市に移り、本格的なトレーニングを開始した。その過程で、家庭との距離や経済的な困難と向き合ったが、それが彼女の体操人生にとって重要な転機となったという。 そこから才能を開花させ、国内の大会では常に優秀な成績を収めていたが、度重なる右膝の前十字靱帯(LCA)の怪我に見舞われた。 最初のLCA損傷は2015年、トロントでのパンアメリカン競技大会のトレーニング中に発生。17年にはモントリオール世界選手権のトレーニング中に同じ怪我が再発し、その後の19年にはブラジル選手権中にも膝をひねり、合計3度の手術が必要となった。 LCAは膝の安定性を保つために非常に重要な役割を果たしており、その損傷は選手にとって深刻な問題だ。こうした度重なる怪我にも関わらず、彼女はリハビリに耐え続けた。 担当医らも驚くほどの驚異的な回復力と更なるパフォーマンスの向上を見せ、東京五輪では個人総合で銀、跳馬で金を獲得し、その名を世界に轟かせた。 さらに今回のパリ五輪では、個人床運動での金に加え、個人総合と跳馬での二つの銀、団体戦総合の銅を獲得。計4個のメダルを手にし、ブラジル史上最大のメダリストとなった。 この4個のメダルにより、ブラジルオリンピック委員会(BOC)から総額82万6千レ(約2120万円)の賞金がレベッカに贈られることも明らかになっている。 レベッカのその忍耐力と勇気は、母ローザさんから学んだものであり、物事に正しく向き合う姿勢や、人生やスポーツにおける女性の強さを体現した。 今やレベッカはブラジル国内のみならず、世界中から注目される存在となった。パリ五輪表彰台では、ライバルたちがレベッカを称える姿が驚きと称賛を引き起こし、異なる国の選手たちが違いを超えて共感し合う姿は世界中に感動を与えた。