いまやウクライナ軍にとって最大の脅威、塹壕を兵士ごと吹き飛ばすロシア軍の新型「滑空爆弾」
(国際ジャーナリスト・木村正人) ■ 塹壕ごと兵士を吹き飛ばす [ロンドン発]英日曜紙サンデー・タイムズは3月30日付電子版で次のように報じた。 【写真を見る】超音速で発射できる滑空爆弾KAB-250 「ロシアの滑空爆弾がウクライナ戦争を変える理由―旧ソ連時代の兵器にフィン(安定翼)と衛星ナビゲーション装置を搭載したことでロシア軍は前線の空を制しつつある」 前線の兵士は塹壕を深く掘れば掘るほど生存確率が上がるとされる。しかし、ロシアの滑空爆弾は塹壕ごと兵士を吹き飛ばす威力を持つのだ。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は3月27日、2000キロメートルの要塞線建設を視察するため北東部スームィ州を訪れた。 ゼレンスキー氏が無理な反攻に固執したため、ロシア軍の侵攻を阻む要塞線の建設が遅れたと批判されている。ウクライナ軍が建設中の要塞線は3層からなり、鉄筋コンクリート構造物、戦車や歩兵戦闘車両に対する射撃陣地、波形鋼板のシェルターが含まれる。
スームィ州はロシアと国境を接しており、一時は占領されたものの、ウクライナ軍の抵抗にあったロシア軍は2022年4月に撤退した。しかし、スームィ州に対するロシア軍の攻撃はこの数週間、ますます破壊的になり、一般市民を殺傷している。 ■ 1日最大500回の攻撃 1日に最大500回の攻撃が行われることもある。東部ドネツク州の激戦地マリンカやバフムートのように廃墟と化した村もある。大砲、戦車による砲撃のほか新型の滑空爆弾も含まれる。 滑空爆弾の標的にされているのはスームィ州だけではない。ウクライナ第2の都市ハルキウもだ。 3月27日のメディアブリーフィングで、ウクライナのドミトロ・クレバ外相は、ロシア軍が3月18~24日にさまざまなタイプのミサイル190発、イラン製カミカゼドローン140機、滑空爆弾700発をウクライナに向けて発射したと述べた。 極めて高速で目標に達する弾道ミサイルを防いだり、着弾するまでに防空壕に身を隠したりするのは難しい。さらに滑空爆弾がウクライナ軍に追い打ちをかける。 クレバ外相は「戦場におけるロシア軍の主な利点は現在、滑空爆弾が広く使用されていることだ」と指摘した。 「平均500~1500キログラムのこれらの滑空爆弾によってロシアの占領軍は攻撃目標を破壊し、廃墟の中を進むことができる。この戦術に対抗するには滑空爆弾を投下する戦闘爆撃機を撃墜するしかない。前線での強力な防空システムがなければ、ロシア軍を撃退することはできない」