3Dプリンターで住宅再建を、組み立ては1日・コストは安く…能登半島やウクライナ復興に
建設用3Dプリンターでコンクリート製部材を成形し、1日足らずの組み立て作業で完成する「家」が、能登半島地震の被災地や戦禍に苦しむウクライナで住宅再建に活用される。費用は1棟数百万円。開発した新興住宅メーカーは先月下旬から、広島県内で高強度の新素材を使う実証実験も始めており、従来と全く異なる住宅供給システムの確立を目指す。(小松大騎) 3Dプリンターで成形された部材で組み上げられる球体タイプの住宅(広島県坂町で)
手がけるのは2018年創業の「セレンディクス」(兵庫県西宮市)。22年に球体タイプ(10平方メートル)、翌年に平屋タイプ(50平方メートル)を開発。価格はそれぞれ330万円、550万円(税別、水回りやエアコンなどの設備は後付け)と、乗用車1台程度に抑えている。
能登半島地震で住宅約7000棟が損壊した石川県珠洲市では今月下旬以降、平屋タイプの住宅1棟が建設される。地元の設備工事会社「三百苅(さんびゃくがり)管工」が「復興のシンボルになる『未来の家』を建て、地元に明るい話題を提供しよう」と注文した。
市内外に避難している被災者の多くは高齢者で、通常の木造住宅を一から再建するのは経済的に厳しく、低コストで家を持てる選択肢を示すのが狙いだ。まずは住み心地を体験してもらおうと、無料の宿泊施設として利用するという。
三百苅管工に建設を提案した同市助政(すけまさ)地区の蔵雅博区長(64)は「間もなく震災半年だが、仮設住宅入居の見通しが立たず、住民約40人の半数は避難所などで暮らしている。少しでも前向きな気持ちになってほしいと思った」と話す。
3Dプリンター製住宅は、日本政府が財政支援するウクライナの戦災復興プロジェクトにも採用される。世界銀行などの試算では、ロシアの爆撃で破壊された集合住宅などは約200万世帯に及び、新たに70平方メートルの3Dプリンター製住宅を建設する計画が進められている。
セレンディクスは、今年2月に初めて開かれた「日ウクライナ経済復興推進会議」で決まった支援の枠組みに参加しており、3Dプリンターを動かすのに必要な設計図を無償で提供する。