「お帰り、また会えたね」ペットの遺骨で真珠 約1年見守り、浜揚げに立ち会う人も
きっかけはペットロスの研究者と真珠養殖名人との出会い
事業のアイデアについて増田代表は「五島列島に行ったとき、長崎大学大学院の松下吉樹教授、奈留島で真珠養殖を行う多賀眞珠の清水多賀夫さんと食事をする機会があり、そこで出た会話がきっかけだったんです」と振り返る。 「当時、松下先生がペットロスになっていて、清水さんから“真珠は貝が受け入れれば何でも核になるんですよ”という話を聞き“僕の犬の骨で真珠を作ってもらえませんか”と。私もずっとペットロスを抱えていたので、そんな真珠なら私も欲しいと思い、ぜひ参加したいと思ったんです。そこから3人で真珠づくりが始まりました」 骨のかけらを核とする真珠づくりが始まったが。 「最初に骨のまま入れたら貝の力が強くて粉々になってしまい、次にコーティングして入れたら今度は貝の柔らかい部分を突き破り貝を死なせてしまった。完成まで試行錯誤して2年かかりました」 ついに松下教授の愛犬の骨で真珠が完成。「そのとき松下先生が涙を浮かべて微笑みながら“お帰り”と言ったんです。それがあまりにも感動的で、きっと必要とする方は他にもいると思い、五島市の助成を受け事業として立ち上げました」 今では骨と8㎜のICチップを核に真珠を完成させる方法を確立。真珠ができ上るまでの様子をその都度、映像などで依頼主に共有する。取り出しの際には「ほとんどの方が五島にいらっしゃって立ち会います。来られない方にも、その様子をライブ映像で共有します。真珠と対面すると皆さん“亡くなった子に言うのはおかしいかもしれないけど、お帰りと言いたい”とおっしゃいますね。やっぱり、ペットが亡くなって止まってしまっていた時間が動き出すんだと思います。悲しみは無くならないけど少し前向きなものになるのかな、と」 ジュエリー用に加工された白く丸い真珠とは違い、一粒ごとに色や形もさまざまな真珠に、亡きペットの個性を重ねる人も。オプションのかごペンダントも、そんな真珠に穴を開けずにペンダントにしたいという気持ちを叶えるため大きな真珠を1粒収めることができるチャームを特注。ペットを亡くした人たちの心の痛みに細やかに寄り添うことができるのも「同じ痛みを知っているから」と増田代表。 ペット産業の成長とともに、その別れをサポートするサービスも増えた。ペットロスを感じたときも、きっと自分に合ういやし方を見つけられるはずだ。 「真珠葬」は「第13回 インターペット ~人とペットの豊かな暮らしフェア~」(4月5~7日まで東京ビッグサイトにて一般公開)にてブース出展中。