相次ぐ強盗事件、SNSがきっかけ 脅しや無報酬「使い捨て」の構図
今年8月以降に全国で相次ぐ強盗事件などで逮捕された18事件の容疑者50人のうち、少なくとも31人がSNSなどから事件に関わった疑いがあることが、警察や捜査関係者への取材でわかった。少なくとも7人は何者かから脅され、5人は報酬を受け取っていなかった。犯罪グループが実行役などを使い捨てにする構図が浮かんだ。 【画像】実行役が使い捨てにされる闇バイトとは 18事件は、今年8月27日~11月3日に北海道、栃木、埼玉、千葉、東京、神奈川、山口各都道県で発生した強盗殺人、強盗致傷、強盗予備事件など。住人ら10人以上が負傷し、横浜市青葉区では男性(当時75)が全身を殴られて亡くなった。 朝日新聞は容疑者の供述や、捜査状況について、各都道県警察の発表内容に加え、捜査関係者に取材した。 一連の事件では、50人が逮捕された(不起訴を含む)。年代別では20代が34人でもっとも多く、30代が8人、10代が7人、40代が1人。実行役が大半で、運転役や見張り役、リクルーター役もいた。 逮捕された31人は事件に関わるきっかけについて、X(旧ツイッター)やSNSを挙げたり、「闇バイトに応募した」などと供述したりしていた。 8人が身分証などの個人情報を何者かに送信するなどして渡したと説明しており、7人は何者かから「脅された」と供述した。 一方、闇バイトが絡む事件は強盗に限らず多岐にわたり、犯罪グループにとって欠かせなくなっている。背景のひとつにSNSの発達で容易に「若者」らを勧誘でき、匿名性の高い通信アプリによって証拠を残しにくい形で指示を出せるようになったことがある。 こうした状況に警察当局も危機感を隠せない。警察庁は10月には幹部自らXなどで動画に出演し、闇バイトの応募者に異例の呼びかけを行った。動画では、「あなたや、あなたのご家族を確実に保護します」「安心して、そして勇気をもって今すぐ引き返してください」と訴えた。 動画公開後の3週間で、闇バイトの応募者やその家族の保護は、全国で46件。そのうち、インスタグラムで応募した事例では、10代女性が詐欺事件の「受け子」と「出し子」を指示されたが従わず、その後に自分や親族の携帯電話に電話がかかってきたため、警察に相談した。 40代女性はインスタグラムで「高額バイト」と検索。指示役から秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」で個人情報の確認が必要だと伝えられ、マイナンバーカードの写真を送ったが、怖くなり警察に相談したという。 警察庁は11月、呼びかける内容に警告の文言を加えた。「警察は必ず捕まえます。逃げることはできません」。注意喚起を続けても事件がなくならない背景には、犯罪と知りつつ応募する人たちの存在があるためだ。警察庁は警告する。「知らなかったという言い訳は警察には通用しません」(小寺陽一郎、板倉大地)
朝日新聞社