【ライブレポート】HAGANE、まさにreboot=再起動と呼ぶに相応しい堂々としたパフォーマンス
2023年2月にSakura(G)とSayaka(B)を除く、3人のメンバーの脱退が発表され、5月26日の東京・新宿ReNYでのライヴを最後に活動休止状態だったハーモニック・メタル・バンドHAGANEが新体制で復活ライヴ<HAGANE reboot live -Life goes on!>を行なった。 2024年4月23日に新人の凪希(Vo)と、ソロ・ドラマーとして活躍しているJUNNA(Dr)を迎えた4人編成で活動することを公表したバンドは、5月29日にEP『Life Goes On!』をリリース。HAGANEの進化を示したこの作品はファンのみならず、メタル界隈で凄まじい反響を得ていたが、この日の東京・渋谷ReX公演も当然のように超満員となって実施された。 場内が暗転し、『Life Goes On!』のオープニングSEの「Victoire」が流れる中、ステージにJUNNA、Sakura、Sayakaが登場。EPから「天下五剣」のイントロをスタートすると、凪希が姿を見せた。ここで初めて素顔を公開した彼女だが、何と言っても耳を奪われたのがその滑らかな歌唱だ。EPでの歌唱も高評価を得ていた彼女は、サビの高音パートも綺麗な声で高らかに歌い上げており、1番のサビが終わったところで、その歌声に感激した観客から大きな拍手が送られていた。勢いのある演奏も見応え満点で、Sakuraのスピード感に溢れたギター・ソロで盛り上げると、バンドは「BRAVE」をプレイ。 ヘヴィなギター・リフからスタートするこの曲ではJUNNAの得意のツイン・ペダルの連打に圧倒されたが、そのエネルギッシュなドラミングはHAGANEを別次元に導いているような印象を持った。実際、SayakaもSakuraもJUNNNAに引っ張られるように大胆でかつダイナミックなプレイを披露しており、HAGANEがスケールの大きなバンドへと成長したことを実感した。 さらに、Sakuraが「みんな頭を振る準備はできてる?」と言ってスタートした「To Cover」、ポップ・パンク調の「GoGoKart」をプレイしたが、ライヴで歌うのがこの日が人生初めてという凪希は、人の心に響くような歌い方を自然と身に付けているようで、そのエモーショナルな彼女の歌に観客も魅了されているようだった。 Sakuraが「剣士(HAGANEのファンのこと)のみんな! 私たちがHAGANEだ!」「この1年間、お待たせしました!」と言い、観客から大歓声が挙がると、メンバー紹介を経て「GunRock」をスタートした。イントロでのSakuraの切れ味鋭いギター・リフと凪希のハイ・トーン・スクリーム、ノリのいい演奏とキャッチーなヴォーカル・メロディで観客を熱くすると、続く「SuperVillan」ではSakuraが長尺のギター・ソロ披露。ギターが1人になった新生HAGANEらしいアレンジだと感じたが、曲が終わると、凪希が「BlackCult」のサビをアカペラで歌い始めた。その透明感のある美しい歌声に観客は釘づけにすると、サビでも突き抜けるようなハイ・トーンで観客を圧倒。バンドのスリリングな演奏も圧巻だった。 SE「(E-102y)」に続いて、切なさを感じさせる「Labradorite」で感動的なムードを作り上げたバンドは、Sakuraのギター・ソロ・タイムに続いて、インストゥルメンタル曲の「DATT」をプレイ。Sakuraの身体からロックのエナジーを感じさせるような堂々とした弾きっぷり、テクニカルでありながらエモーショナルなプレイにはますますギター・ヒロインとしての風格を感じさせたが、JUNNAのドラム・ソロ・タイムからバンドは「Hero Time」をスタートした。 Sakuraが7弦ギターを使ったニューEP収録のこの曲はそれまでのHAGANEになかったタイプの曲で、バンドの重厚感のある演奏、凪希のパワフルな歌声、SakuraとSayakaのコーラスが緊迫感のあるムードを作り出していた。 さらに、インストゥルメンタル曲「Undersea Palanolia」、中盤に観客が「ウォーオー」と大合唱となった「Sword Of Judgement」に続いて、バンドはSakuraの美しいギターのアルペジオから始まる「Connect」をプレイ。これまでもライヴで観客をうっとりとさせてきたこの曲だが、凪希のクリアなハイ・トーン・ヴォイスが楽曲をさらにエモくさせており、場内には目頭を熱くしている人も見受けられた。 凪希が「Soul!」「Beats!」と観客とコール&レスポンスを行なった後、バンドは「SoulBeats」をスタート。Sayakaのバキバキとしたベース・サウンドが楽曲に凄みを与えており、4人編成となってSayakaの存在感が一気に増したという印象を持ったが、曲が終わると、メンバー全員のMCタイムが始まった。 まず、凪希がオーディションでHAGANEに加入したことや、それまでも音楽がやりたくて、様々なオーディションを受け続けたものの、何度も挫折して、HAGANEがダメだったら、音楽を止めてしまおうかと考えていたことを語った後、「HAGANEは自分を変えるきっかけを作ってくれた大切なバンドです。大好きなメンバーと一緒に音楽をやれていて、幸せです。これからも素敵な音を奏で続けるので、皆さんもついてきてください」と言い、場内から大きな歓声が上がった。 続いてJUNNNAが「ライヴ、チョー楽しいです!」「HAGANEを続けてくれたSakuraちゃん、Sayakaちゃん、そして、加入してくれた凪希ちゃんがいたからこそ、今日があるんだなと思います。HAGANEはこれからたくさん音を重ねて、たくさんライヴをして、もっともっと逞しく成長して、強くなって、また皆さんにお会いできたら嬉しいです!」と語り、大きな拍手をもらっていた。 さらに、Sayakaが「この1年、復活を待ってくれた剣士の皆さんありがとうございました。Sakuraが作詞した『Life goes on!』という曲の歌詞に『分岐点』という言葉が出てくるんですけど、これは(配信)EPのジャケットにもなっているんです。分岐点は今の私たちのキーワードになっていて、分岐点は人生のいろんな段階で訪れるんですけど、大体苦しい時とか、悲しい時とか、辛い時なんですよね。メンバーみんなそれぞれ辛い思いとか、悲しい思いをしてきて、その度にいろんな分岐点を見つけて、それで今、4人でステージに立っていると思うと、本当に運命に導かれてここに立っているんだなと思いました」と語り、観客もその言葉に心を動かされたようだった。 最後にSakuraが目に涙を浮かべながら、「私たちを信じて、ついてきてくれて、本当にありがとうございます。自分たちが目指したい音楽を実現するために理想のメンバーが集まって、形になってきたなって思っていますし、本当にこれからずっとこのメンバーで長くやれたらと私は思っています。そして、何よりもずっと支えてくれている剣士の皆さん、本当にありがとうございます!」と語り、バンドは「Life goes on!」をスタートした。 Sayakaが語ったとおり、「たった一度で変わっていく未来 毎日が選択と分岐点」という歌詞が出てくるこの曲では、凪希が高らかに歌い上げたサビの「諦めないで 辿り着きたいゴールがあるなら」「きっと叶うから 振り返って笑えればいいじゃん」という歌詞とメロディにグッと来たが、ギター・ソロの後、観客が「ウォーオー」と一緒に歌うなど、感動的なムードで本編は終了。アンコールではバンドが初めてMVを作ったナンバーの「WintrySky」がプレイされて、約1時間40分のライヴは終わった。 4人になったことで、バンドに思いっきりの良さが生まれ、それが、これまでになかったパワフルや躍動感を作り出していたような印象だが、初めてとは思えない凪希の堂々としたパフォーマンスと歌唱力の高さも素晴らしく、まさにreboot=再起動と呼ぶに相応しいライヴだった。 この興奮が冷めよらぬ中、7月16日に神奈川・横浜ReNY betaにて、追加公演となる『HAGANE reboot live -Life goes on!- additional performance』も実施された。 渋谷ReX公演はチケット購入希望者が殺到し、高倍率の抽選が当たった幸運な人しか観られなかったため、場所を移して、追加公演が決まったが、こちらもすぐにソールドアウト。超満員の中、ライヴは行なわれた。 この日、初めて新生HAGANEを観るという大勢の人のために、ライヴの基本的な流れは渋谷ReXと同じだった。しかし、バンドとしては2回目のライヴということで、終始落ち着きと余裕が感じられ、それがバンドのパワフルなサウンドにも現われていた。 特に凪希は1曲目の「天下五剣」から自分の持ち味を存分に発揮しており、前回より声に力強さを感じさせたが、MCでの盛り上げ方も完全にコツを掴んだようで、もう何年もHAGANEを率いて活動しているかのような風格を感じさせた。 この日、セットリストで渋谷ReXと唯一違ったのは、バラードが「Connect」から「Memories」に変わっていたこと。渋谷ReXでは「Connect」がグッと来る場面の1つであったが、今回も凪希が「Memories」を見事に歌い上げ、場内は彼女の歌声に聴き惚れていたようだった。 さらに、前回は本編ラストの「Life goes on!」の前に各メンバーが現在の思いを語り、感動的なひと時となったが、今回はSayakaがお弁当の話で笑いを誘いつつ、SakuraがHAGANEを再開出来たことへの感謝を語り、再び目頭を熱くしていた。 この2回目のライヴでバンドは、さらに進化を遂げており、日に日にアップデートしていることが伝わってきた。しかも、今回は鋭さと破壊力も増しており、会場にいた誰もが、今後、HAGANEがさらなる飛躍を遂げると確信したことだろう。 Jun Kawai
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