森保J新GKシュミットと20歳DF冨安の高さは世界に通用するのか?
左腕にキャプテンマークを巻き、大分スポーツ公園総合競技場のピッチへ先頭で入場してきたときには感じなかった違いを、DF吉田麻也(サウサンプトン)は国歌斉唱の直前になって初めて感じた。右隣に並んでいた、GKシュミット・ダニエル(ベガルタ仙台)と肩を組んだ瞬間だった。 「相当デカいな……」 身長189cmの吉田に対して、ベネズエラ代表と対峙した16日のキリンチャレンジカップ2018でA代表デビューを果たした26歳のシュミットは、歴代の守護神のなかでも群を抜く197cm。これは日本サッカー協会(JFA)の発表であり、実は最近になってさらに1cm伸びている。自分よりも大きな味方とピッチ上で共演するのは、通算88試合目を迎えた30歳のベテランにとって初めてだった。 キックオフを告げる主審のホイッスルが夜空に鳴り響くと、吉田の右側にも新たな光景が生まれた。初キャップを獲得した10月12日のパナマ代表戦に続いて、東京オリンピック世代でもある20歳のホープ冨安健洋(シントトロイデンVV)が抜擢されていたからだ。 吉田と身長188cmの冨安が、センターバックでコンビを組むのは初めてとなる。歴代の日本代表で相方を務めてきた178 cmの今野泰幸(ガンバ大阪)、183 cmの森重真人(FC東京)、182 cmの槙野智章(浦和レッズ)、そして182 cmの昌子源(鹿島アントラーズ)の誰よりも高い。 センターバックに求められる武器は多岐にわたる。フィジカルコンタクトの強さ。状況判断力と危機察知能力。攻撃の起点になる前線への正確なフィード。そのなかでも高さは世界と対峙するうえでの一丁目一番地であり、吉田自身も「自分の身長が最低限」と偽らざる思いを胸中に抱いてきた。 だからこそ、自分と比べてはるかに大きいシュミット、ほとんど変わらない冨安と自軍のゴール前でトライアングルを形成する状況に、日本代表やヨーロッパで世界と戦ってきた吉田は「やっと普通(の高さ)になったかな、という感じですね」と言い、こう続ける。 「セットプレーではまだまだ低さを感じることがあるので、大きくて動ける選手がもっと出てこないといけない。高さというのは、なかなか育てられないので」 前半11分にベネズエラが獲得した最初のコーナーキック。自身から見て右から蹴られたハイボールへ果敢に飛び出し、ガッチリとキャッチしたシュミットは、相手の顔色をうかがう余裕があった。 「あれで相手が少し嫌がったと思うので、しっかりと自分の特徴を出せたのはよかったかなと思います」 ベネズエラが放ったシュートは8本。決定的なそれはなく、同点とされた後半36分のPKによる失点には「止めていればヒーローでしたけど、PKは運なので」と気持ちをすぐに切り替えた。異彩を放ったのはサイズと並ぶもうひとつの武器、右足から放たれる正確無比なキックだった。 敵陣の中央にいたFW大迫勇也(ベルダー・ブレーメン)へ、絶妙のパスを通したのは前半終了間際。大迫からパスを受けたMF中島翔哉(ポルティモネンセSC)が放ったシュートは惜しくもゴールの左ポストをかすめたが、わずか数秒でフィニッシュへもち込む攻撃の起点になった。