無塩食に高血圧薬は毒? ~教えられた時の驚き~
◇高血圧患者さんの無塩食の効果
3人の高血圧患者さんについて、食塩の入った調味料や加工食品を取らない無塩食の効果を検討しました。 ▽72歳女性。無塩食前の食塩摂取量は1日当たり7.7グラム(g)でした。高血圧薬アジルサルタン(RA系抑制薬)20ミリグラム(mg)とアムロジピンベシル塩酸(血管拡張薬)2.5mgを内服して、血圧は最高122、最低76でした。無塩食後の食塩摂取量は1日当たり1.6gで、高血圧薬を2剤とも中止しても血圧は最高125、最低70と正常な範囲を維持できました。 ▽80歳男性。無塩食前、高血圧薬テルミサルタン(RA系抑制薬)40mgとアムロジピンベシル塩酸(血管拡張薬)2.5mgを内服して、血圧は150/92mmHgでした。無塩食後の食塩摂取量は同0.8gとなり、高血圧薬2剤中止しても、血圧は最高127、最低73と改善しました。 ▽62歳男性。無塩食にする前は高血圧薬内服なしで血圧は最高153、最低105でした。無塩食後の食塩摂取量は1日当たり2.1gで、血圧は最高133、最低91まで低下しました。
◇「無塩そば」
そばが好きな日本人は多いと思います。筆者もそばを食べたくなる時がありますが、外食では「無塩そば」がないので自宅で作ります。「無塩そば」が売られています。そば粉に含まれるナトリウムで、乾麺100g当たりの食塩相当量は0~0.04gです。「肉野菜そば」にして食べると、食塩相当量は0.1~0.2gになります。(了)
中尾正一郎(なかお・しょういちろう) 日本循環器学会専門医・日本内科学会認定内科医。1973年、鹿児島大学医学部卒業。米ハーバード大学医学部(循環器内科)、米マウント・サイナイ大学医学部(臨床遺伝学)留学を経て、95年、新しい疾患「心ファブリー病」を医学雑誌「NEJM」で日本から世界に発信。99年、鹿児島県立鹿屋医療センター院長に就任し、日本初の2カ所主治医制による地域医療「鹿屋方式」を構築。NHK「クローズアップ現代」で紹介された。「高血圧専門外来」で対症療法(高血圧薬内服)よりも、原因療法(減塩・無塩)を勧めている。