「あんなコースでは伸びないはず」帝王・山田裕仁が決勝レースを振り返り“唖然”/向日町競輪G3
窓場を抑えた脇本の驚異の捲り
そしてゴール直前では、内の窓場選手と外の脇本選手によるハンドル投げ勝負に。ゴールの瞬間はまったくの横一線にみえましたが、スロー再生された映像ではほんのわずかだけ、外の脇本選手が前に出ていました。ゴール後、大槻選手の落車について3選手が審議対象となりましたが、失格者はなく到達順位のとおり確定。これで脇本選手は、2021年と2022年に続く「出場機会3連続優勝」達成となりました。 2着が窓場選手で、3車が横並びとなった3着争いは武藤選手が競り勝っていましたね。地元地区である近畿のワンツーではありますが、3連単は11,560円と高配当となりました。これで脇本選手は通算16回目のG3優勝を決めたわけですが…このレースの感想をひと言でいうならば「唖然」でしょうか。窓場選手もレース後にコメントしていましたが、まさかあそこからひっくり返されるとは思いませんよね。 捲りが決まりづらい向日町バンクで後方8番手に置かれただけでも厳しいのに、勝負どころでは大槻選手が落車した影響で、イエローラインよりも外を回らされている。私の経験上、あんな位置からでは捲りきれないし、あんなコースでは伸びないはずなんですよ。しかし脇本選手は、そこから捲りきってみせた。しかも、逃げたのは清水選手で、捲り合いの相手は窓場選手ですよ。凄いモノを観たという思いが強いですね。 僅差2着に敗れた窓場選手は、文句なしに強いレースをしている。脇本選手を後方に置いて中団から捲るというのはプラン通りのはずで、初手での前受けからゴールの直前まで、ほぼ理想通りに運べているんですよ。窓場選手には「前受けからの突っ張り先行」という選択肢もありましたが、自分も優勝を狙えるカタチで脇本選手とガチンコ勝負となると、今回の展開が理想的でしょう。 しかも、主導権を奪ったのは清水選手で、最後の直線に入ったところで力尽きたとはいえ、かかりのいい逃げをみせている。脇本選手にとって「追い風」となる要素など、この展開では皆無だったわけです。であるにもかかわらず、脇本選手は窓場選手との捲り合いを制して、1着まで突き抜けてみせた。こんな尋常ならざる走りができるからこそ、脇本選手は“最強”と呼ばれているわけですが…それにしても凄かったですね。 それだけに、2着に敗れた窓場選手は、地元記念を獲れなかった悔しさはあっても、自分の走りに対する悔いはないはず。普段は直接対決することのない脇本選手との勝負で、この世界の“頂き”までの距離を実感できたのは、大きな収穫でしょう。個人的には、窓場選手の強さに驚かされたという面もある。もう彼は、特別競輪のタイトルが獲れて不思議ないレベルにまで成長していますよ。 脇本選手については、この素晴らしいデキをぜひ維持して、共同通信社杯競輪(G2)に臨んでもらいたいもの。宇都宮競輪場の500mバンクは、脇本選手の卓越したスピードを存分に生かせる、最高の舞台であるはずです。今の調子のよさを維持できれば、トップクラスの選手が束になってもかなわないような、あの理不尽なほどの強さをみせてくれるかもしれませんよ。