「開けて!」「何やってんだ!」午前0時、勉強合宿所の闇に消えた“白いワンピースの少女”
怪談界きってのストーリーテラーであり、著者累計の売上は40万部を突破した松原タニシ氏。この夏上梓した『恐い怪談』(二見書房)は、タニシ氏が取材を重ねた実話怪談から選りすぐりの100本を構成して書き下ろしたもの。 【写真】この記事の写真を見る(2枚) お盆だもの、タニシさんの珠玉の怪談で涼しくなってみませんか? 2日目は「勉強合宿」。タニシさんが坂口さんという方から聞いたお話です。
勉強合宿
40年前、ある大学の附属女子校に通っていた坂口さんは、高二の夏に高校主催の勉強合宿に行かされた。合宿所は富士山の近くにあり、終日勉強とテストをくり返すハードな合宿だった。60人ほどの生徒が参加していた。 その日、坂口さんはなかなか合格点を出すことができず、何度もテストをくり返し受けていた。ようやくテストにパスし、部屋を出ると、友達二人が待っていてくれた。 すでに決められた入浴時間は過ぎていたが、ギリギリ間に合うと思い、友達と大浴場へ向かった。 入浴を済ませ「ロビーの自販機でカップラーメン買っていこっか」と、みんなで上の階に上がろうとしたとき、電気が消えた。 「この時間だから電気も落とされたのかな」 「先生に見つかる前に急いで戻ろう」 真っ暗な階段を上がって一階のロビーに出る。すると暗闇のなか、ロビーのソファーに白っぽいワンピースを着た女の子が座っていた。 午前0時を回ったか回らないか、こんな時間に自分たち以外の生徒が部屋の外にいるのはおかしい。女の子は横顔しか見えなかった。 坂口さんはとりあえずロビーの自販機でカップラーメンを買ってお湯を入れながら様子をうかがう。 「あの子、何年生だろうね。同じ学年かな」 「こんな時間に何してるんだろ」 「誰かと待ち合わせしてるのかな」 「私みたいに勉強できなくて思いつめちゃったりしてるのかも」 「どうする、声かけてみる?」 「いや、それはやめときなよ」 そんなことをヒソヒソ言っていると、女の子がスッと立ち上がった。そして、そのままテクテクと歩き、裏口のドアを開け、外に出ていった。