四川の涼麺:夏の「ひんやりピリ辛」の魅力
【東方新報】「涼麺の冷たさは雪のように感じられ、その美味しさを皆に勧めたい」、中国唐代の詩人杜甫(Du Fu)は『槐葉冷淘』でこのように涼麺(冷やし麺)を描写し、友人に強く推薦した。 涼麺は、四川省(Sichuan)の夏の定番料理だ。作り方は簡単で、かん水麺を茹でて取り出し、自然に冷ますか扇風機で冷やし、菜種油を加えて麺がくっつかないようにする。その後、にんにく水、花椒粉、醤油、酢、ラー油、味の素、塩、砂糖などの調味料を加え、もやし、きゅうりの千切り、鶏肉の細切りなどの具材と混ぜ合わせる。 65歳の張嬢(Zhang Niang)さんは、成都市(Chengdu)新都区で涼麺の屋台を営んでいる。彼女は32年間この仕事を続け、その腕前で地元の小吃界(軽食業界)で「伝説」となった。夏の炎天下、張嬢さんの屋台には長い行列ができる。座る場所がないため、使い捨ての紙碗を手にしたお客さんは立ったりしゃがんだりして食べている。多くの人は持ち帰って家で楽しむ。 辛味たっぷりの涼麺は見た目ほど重くなく、実際にはさっぱりとした味わいで、風味が豊かだ。張嬢さんの涼麺の秘訣は何かと尋ねると、彼女は即座に「調味料」と答える。しかし、具体的な配合は明かさず、調味台を指して「調味料はこれらで、量は手加減と経験で決める」と言う。 四川人は酸辣、糖酢(甘酢風味)、胡麻だれ、怪味(辛味、甘味、酸味、塩味、しびれなど加えて作る複雑な味)など、さまざまな涼麺の味を開発してきた。現在では、自転車で売り歩く屋台、至る所にある簡素な屋台、小さな軽食店、さらには高級レストランでも涼麺を見かけることができる。 多くの四川人にとって、涼麺は主食ではなく、むしろおかずの一つだ。涼麺と粥の組み合わせは多くの四川家庭の夏の定番だ。焼肉屋、火鍋屋、ザリガニ料理店のメニューにも必ず涼麺があり、涼麺の美味しさが評判となる店もある。四川料理店では涼麺を冷菜として提供することもあり、単独で出すこともあれば、涼拌白肉(薄切り肉の冷たい和え物)と一緒に提供することもある。 一般的な四川の涼麺に加えて、四川省広元市(Guangyuan)の名物「広元蒸涼麺」も独特だ。見た目は涼麺だが、実際には温かい。形状は陝西省(Shaanxi)の涼皮(小麦粉や米粉の生地を広く伸ばしてゆで上げた麺)に似ているが、原料は米だ。米の生地を鍋に入れ、笊で蒸してから取り出して小さく切り、もやしを敷いた碗(わん)に盛り、熱いにんにく水、醤油、酢、ラー油で味付けする。広元蒸涼麺は広元の人びとにとって一年中欠かせない美味だ。 涼麺は四川の特色ある軽食の代表として、すでに世界に進出している。海外の四川料理店でも人気のメニューとなっており、多くの外国の要人にも好評だ。 「涼麺は夏にぴったりの料理で、とても美味しい」と、成都に住む韓国の美食ブロガー、朴大一さんは語る。彼は広元蒸涼麺を特集した動画を撮影しており、「韓国人も夏に冷麺を食べるのが好きで、四川の涼麺もとても爽やかだ」と話している。 四川の若手シェフ、付海勇(Fu Haiyong)さんは、涼麺はもやしやきゅうりと合わせるだけでなく、フカヒレ、ナマコ、松茸などとも相性が良いと考えている。しかし、どんな具材や盛り付け方法を取り入れても、その基本の味は変わらない。 付海勇さんはさまざまなイベントを通じて、涼麺をロシア、フランス、オランダ、ベルギー、ドイツ、コロンビアなどの国に紹介してきた。「涼麺は食べやすく、風味が豊かで、外国人にも大人気だ」と彼は回想する。「皿を重ねて高く積んでもまだ足りないほど食べる人もいた」。 四川料理の文化を研究する向東(Xiang Dong)氏は、涼麺には定型化されたレシピはなく、家庭ごとに味が異なるかもしれないが、全体的な風味は四川涼麺特有のものだと述べている。「私は今年75歳になるが、自分が作る涼麺の味は昔母が作ったものと同じだ。私の子供たちも私の影響を受けてこの味を受け継いでいる」と向東氏は語る。これは一種の食習慣の伝承であり、文化の伝承でもある。(c)東方新報/AFPBB News ※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。